-関西空港調査会主催 定例会等における講演抄録-
久保 和貴 氏
堺市建築都市局 都市計画部都市計画課長
●と き 2023年10月17 日(火)16:00 ~ 17:00
●ところ 大阪キャッスルホテル 6 階 鳳凰・白鳥の間(オンライン併用)
「堺グランドデザイン2040」は、永藤英機堺市長が令和元(2019)年に就任した直後に庁内でプロジェクトチームを設置し、新市長の最初の方針として令和2(2020)年2月に公表したまちづくり方針です。
これを作成するに当たっては、有識者などの専門家に頼らず、庁内の中堅職員が市長と意見交換して作業を進めてきました。私もその当時、都市計画課の課長補佐として庁内のプロジェクトチーム設置時に参加し、一緒に作成してきたという経緯もあったため、今日このような形でお話させていただくことになりました。
「堺グランドデザイン2040」は、20年後の堺市がめざす将来像や展望を示し、まちづくりに関わる人々にこれを共有していただき、同じ方向に向かって進んでいくことを念頭に作成したものになっています。
この計画を令和2(2020)年2月に作成して以降、ここで示した内容を大きな方向性として、令和3(2021)年3月には堺市の総合計画である「堺市基本計画2025」、令和3(2021)年7月にはまちづくりの上位計画である「堺市都市計画マスタープラン」の改定を進めてきました。最近の話でいうと令和4(2022)年12月には、大阪府、大阪市と堺市で連携して、大阪のめざすべき将来像などを示す「大阪のまちづくりグランドデザイン」を策定しております。
本日はこの「堺グランドデザイン2040」の内容を中心にして、各計画に示した堺市のまちづくりの方針を紹介します。これは3年半ぐらい前の計画ですので、その後の現在の取組状況などについても簡単に触れさせていただきます。
グランドデザインについては、先ほど申し上げたように、市民の皆様や堺市の職員をはじめ、堺市に関わっていただける方々、まちづくりに関わっていただける方々が、堺の将来に期待を持てるようにしたいと考えました。
そこで、めざすイメージとして海外の都市の先進事例などを掲げたり、パースや写真などを使用したりして、行政にしては思い切った表現をしているところもありますが、このような形で夢のある未来を描いていただけるようなものとして表現しています。
例えばこの絵の中でいうと、一番左上は南海高野線堺東駅周辺のイメージです。堺東駅周辺ではこの計画をつくった後に連続立体交差事業の都市計画決定をして、事業に着手しています。このイメージで、「ダイナミックに交わる交流拠点」として鉄道の高架化が完了する予定となっている2040年の緑豊かな駅前や、歩行者を主体にウォーカブルな道路空間に再編された姿を表現しています。写真はヘルシンキやニューヨークのものを使っています。
その右下に、「魅力的な店舗が連続し、楽しみながら歩ける空間」というイメージ図がありますが、堺東駅前にある商店街の将来イメージとして示しているものです。
右上に「ターミナル機能などが集積し、生まれ変わったベイエリア」として夜のパースがありますが、こちらは南海本線の堺駅周辺の将来イメージを示したものです。なにわ筋線の開業や万博などをはじめとするベイエリアの発展を想定して、海上交通も含めたターミナル機能が強化されたベイエリアのイメージパースです。パースの右側にあるのはノルウェーのオスロ港の写真です。
その他にも、新産業やスタートアップ企業の集積をめざす中百舌鳥駅前の周辺や、歴史を感じていただくエリアとして仁徳天皇陵のある大仙公園周辺。水辺空間は戦国から江戸期の歴史を感じていただける環濠エリア、海の方ではサッカーのトレーニング施設を活用しながら、水辺を生かしたスポーツも楽しめるエリアをめざす堺浜エリア。
そして、豊かな緑に支えられた暮らしと、今後近畿大学医学部の開設も予定されていて、次世代へルスケア産業を集積し、様々な世代が交流する泉北ニュータウンです。右下にありますが、この辺のイメージができるパースや写真をお示ししているところです。
お手元に「堺グランドデザイン2040」のパンフレットもお配りしていますが、その冒頭でこういうイメージを示した上で、後で個別の内容を示しています。個別のエリアの中身は後ほど、もう少し詳しくご紹介します。
このグランドデザインは最初に申し上げましたように、20年後つまり2040年の堺がめざすべき将来像ということで作成しています。計画の策定に当たり、まず前提として、20年後の堺を取り巻く状況がどうなっているのかについていろいろ検討・想定しております。
広域アクセスの観点から見ると、なにわ筋線の開業やリニアが新大阪まで開業することを想定しています。関西国際空港においては、総旅客数が2019年で3,200万人程度でした。その後新型コロナウイルスの影響もあったかと思うのですが、この時点の想定では2040年に4,000万人超が期待されるということもあって、往復で2,000万人が利用する関空と、リニアなどの国土軸の間を人々が移動することを想定しています。
そういう中で堺市でも人口減少や高齢化が進んでいる状況は他市と同様にあり、現在約81万人の人口が2040年は72万人程度になると予測されています。高齢化率についても約34%が見込まれているので、この関空・国土軸間の移動という人の流れをどのようにして取り込むかが、堺市の成長にとって重要なファクターになるのではないかと考えています。
その一方、新しい技術やライフスタイルの台頭が期待されますし、気候変動などの環境要因や防災面からの要請も踏まえながら、臨海部を中心に工場等が集積する堺市の強みである産業についても一層盛んにしていかなければならないというような考えを持って計画をつくっていたところです。
こうした背景を踏まえて、グランドデザイン2040では、「関西のゲートウェイ都市」「悠久の時を超え未来へ歩む都市」を本市のキャッチフレーズとしております。これに基づいて国内外の交流が活発化し、多様な人が集まる都市、人中心の安全・快適な都市空間を実現する都市、新たな産業を創出し、地域の経済を牽引する都市、潤いのある生活環境と健やかなライフスタイルを提供する都市、をめざして取り組んでいくことにしております。
このキャッチフレーズなどを踏まえ、本日のタイトルにもさせていただいている、「訪れたい」「働きたい」「住みたい・住み続けたい」都市を実現していくために、各エリアにおける方向性をお示ししているところです。
最初に、これまで堺市が少し弱いとされている、「訪れていただく」「滞在していただく」ことのために、ウォーターフロントや歴史を感じる空間を新たな都市魅力として、堺浜、堺駅・堺旧港、環濠エリア、大仙公園といった各エリアを掲げています。
ちなみにこの絵の中にある、堺東駅から環濠エリアを経て堺駅・堺旧港に至るエリアが堺市の都心地域として位置付けているエリアです。そういった意味でもこのエリアについては様々な機能を充実させていく必要があります。
市役所があるのは堺東なのですが、海の方、つまり南海本線の堺駅・堺旧港につきましては、なにわ筋線や、今後の大阪湾ベイエリアの発展も見越して、海上交通なども含めたターミナル機能や宿泊機能を強化していくイメージを示しています。市の内外からたくさんの人が来て、夜も昼も楽しんでいただけるような空間をつくっていきたいと考えていたところです。
まず堺東です。高架化に併せて堺東駅前を改変するイメージで、今のところ高野線の連続立体交差事業も着手したばかりの状況です。詳細はまだ現時点で決まっていないのですが、駅前の広場や駅ビル等の更新も含めて改変していくイメージを持っています。
商店街のエリアも、今後市街地の再開発等によって高層化を想定し大規模に更新します。幅員の広い歩道やベンチ植栽を整備したり、今既に市役所前に市民交流広場として市民の皆さまに活用していただける広場もあり、そういったことも含めてウォーカブルな楽しめる空間にしていきたいと考えているところです。
大仙公園は、仁徳天皇陵はじめ百舌鳥古墳群が位置しているところです。こちらは羽曳野市の古市古墳群と共に、令和元(2019)年7月に大阪府で初めて世界遺産に登録されました。大仙公園の周辺には、仁徳天皇陵など複数の古墳が分布しているので、古墳群の保存・継承やおもてなし環境の整備を進めていきます。具体的には博物館、ガイダンス機能、ミュージアム機能などを考えており、今後検討を進めていきます。大仙公園のあるエリアは、この絵でも分かるように都心部と近いので、このようなエリアの連携も必要だと考えています。
それから海の方の環濠エリア、堺浜エリアです。歴史は堺市の売りの一つ。中世から商港として発展し、国際貿易都市として繁栄してきた歴史があり、そんな中で防衛のために堀をめぐらせた環濠都市が形成されて自治が行われていました。歴史の教科書にもよく出てくる記述だと思います。そのような歴史があるので、近世初頭まで自治都市として繁栄した名残が堺ならではの歴史資産ということで、その名残の一つが環濠として今も残っているものです。
この環濠を親水空間として、水辺を生かした魅力の創出に取り組んでいるところです。環濠北部の鉄砲鍛冶屋敷など、今も古い町並みが残っている部分があるので、それらを活用して歴史を感じるエリアの形成を進めています。
堺浜は、サッカーのナショナルトレーニングセンターが位置しています。概ね工場などが立地するエリアなのですが、大きな広場もあるので、大阪から近い海として、スポーツなどを楽しめるスポーツアイランドにしていこうという構想で、グランドデザインの中に位置付けています。
「働きたい都市」ということで、産業などのお話になります。都市の成長のためには税収を確保していくことが必要なので、民間投資や雇用が求められます。雇用増には様々な企業の皆様の活動が盛んになっていくことが必要なため、新たなイノベーション投資に向けた環境整備も考えねばなりません。
堺市は特に、臨海部を中心に生産機能・物流機能等が集積する工場地が形成されています。これを生かすのはもちろんのこと、グランドデザインの中では、2040年に向けて新たなイノベーションや投資を生み出すエリアとして、中百舌鳥と泉ヶ丘を想定しています。
中百舌鳥は、南海高野線、泉北高速鉄道、大阪メトロ御堂筋線の交通結節点ということもあり、交通利便性が高いエリアにあります。中百舌鳥駅周辺には、さかい新事業創造センター、堺市産業振興センター、堺商工会議所など産業の支援機関も集積しているので支援を受ける環境が整っています。また大阪公立大学中百舌鳥キャンパスにも近く、そのような立地が中百舌鳥周辺でイノベーションを生み出す拠点として期待されています。新金岡や泉北ニュータウンのような既存の住宅地にも近いので、職住近接を実現できるという観点から、雇用も確保しやすいエリアだと考えています。
泉ヶ丘は、堺市南区にある泉北ニュータウンの一番中心的な拠点となっているところです。令和7(2025)年度には、近畿大学医学部および附属病院の開設が予定されており、これに合わせて民間企業とも連携し、健康寿命延伸産業の創出に取り組んでいこうとしています。平成31(2019)年3月には、産業界や学校、行政、地域の皆様に参画していただいて、「堺市健康寿命延伸産業創出コンソーシアム」が設立されています。
臨海部につきましては、用途地域も工業専用地域になっており、大部分がこれまで生産機能や物流機能が集積されてきた工場地です。産業のイノベーションによって低炭素社会にも貢献できるほか、先端技術や成長機会を取り込んで、今既にある産業集積を進化させていくことが求められています。
地図では、美原区のエリアや幹線道路沿道も示していますが、堺市では既に市街地が形成されており、例えば工場が新たに立地や拡張を行うときに、なかなか適地が見当たらないという課題を持っています。
そういった中で、阪和自動車道や南阪奈道路の結節する堺市美原区の国道309号の沿道や、松原泉大津線の沿道については、一部市街化調整区域の残っている部分もあるので、道路沿道への企業進出等を含めた投資をめざしていきたいと考えているところです。
人口減少や高齢化が進む中で都市が維持・発展していくためには、「住みたい・住み続けたい」と思っていただく必要があります。堺市の中でいうと、新住宅市街地開発法で計画的に整備された新金岡や、泉北ニュータウンなどのエリアに代表される住宅ストックが多くあります。新金岡、泉北ニュータウンとも、まちびらきから50年が経過しており、これから魅力的な再生を行っていくところです。
居住という観点で各エリアをもう1回ご説明します。泉ヶ丘については、泉北ニュータウンが高度経済成長期の住宅需要に応えるために、新住宅市街地開発事業によって、計画的に整備されたエリアになっており、緑が豊かな市街地として成長してきました。しかし、昭和42(1967)年のまちびらきから50年以上が経過し、人口減少や高齢化の進行、住宅や施設の老朽化などの課題が顕在化しているエリアでもあります。
泉北ニュータウンは堺市南区というエリアに位置します。南区は堺の中で一番人口減少率の大きいエリアであり、課題先進地域的な側面もあります。泉北ニュータウンは、泉ヶ丘、栂・美木多、光明池という三つの駅を中心にエリアで構成されており、各駅前には地区センターとして地域の生活サービスの核となる商業・業務施設などが集積しています。
特に泉ヶ丘周辺は中核的タウンセンターとして、広域的な圏域を有する商業施設、例えば高島屋などもあり、文化・医療・学術機能が集積しています。泉ヶ丘では、大型児童館「ビッグバン」や大蓮公園などの施設の利活用や、新しく泉ヶ丘公園という公園の整備も進んでおり、こういったところで活性化を図っていくことを考えています。また、泉北ニュータウン全体が、スマートシティの取組を市内でも積極的に進めているエリアになっています。元々計画的に整備された市街地ということもあり、これと豊かな自然環境を生かして、緑空間と都市機能が融合した職住近接型の田園都市をめざしています。
新金岡も、泉北ニュータウンと大体似たような時期に計画的に整備された市街地です。大阪府やUR などの公的賃貸住宅が多数位置していますが、ここも更新の時期を迎えているため、大阪メトロ御堂筋線沿線の生活の拠点として、今後方針の検討を進めていきたいと考えています。
各エリアをつなぐ交通ネットワークの話も大事です。計画の中では、各エリアの陸上の交通ネットワークでつないでシナジー効果を高め、強みを発揮させるという観点がありました。
計画策定後の状況として、交通の観点から都心部のまちづくりを考えて、魅力向上を図ろうとしています。令和3(2021)年8月には「SMI(堺・モビリティ・イノベーション)プロジェクト」と称した新しい交通システムの基本方針を公表しました。
堺東は「暮らす・働く・訪れる人がまじわる交流拠点へ」をキャッチフレーズに、多様な人々が集うエリア、ウォーカブルな空間をめざします。
ボーダレスに広がる居心地の良い海辺空間というイメージをめざします。将来イメージとして、右のパースが堺駅・堺旧港エリアで、海辺にオフィスや宿泊、飲食施設があって昼も夜も楽しめるハーバーのイメージです。
交通結節点であり、産業支援機能が立地していることもあるので、そのような観点で「ちょっと先、もっと未来を体感できる街」をキャッチフレーズに、産業や研究機関が集まってくるようなイメージで、最先端のテクノロジー、ビジネスを創造する場所というのをエリアのコンセプトにしています。
泉ヶ丘を中心とした泉北ニュータウンでは、公的賃貸住宅等の更新などがこれから事業として出てくるので、それに伴って緑化の充実や新しい都市機能の導入、スマートシティ化による快適な生活、多様な働き方の実現をめざします。泉北ニュータウンがニュータウン再生のフロントランナーと言われるようになり、豊かな緑空間と多様な都市機能が融合する「21世紀型の田園都市」となることをめざしています。
仁徳天皇陵のある大仙公園エリアは「未来へ継承していく全国16万基の古墳の聖地」を将来像とし、百舌古墳群の保存・継承、価値魅力の発信を進めているところです。大仙公園は、都市計画決定されている面積は81.1ha ですが、既にオープンしている面積は38.5ha でまだ半分に達していないので、今後順次整備を進めていく予定です。当面はJR 百舌鳥駅周辺を整備して、来訪者をお迎えする空間として広場なども整備して、仁徳天皇陵までの空間を楽しんでいただけるエリアにしていきたいと思っています。
堺東と堺駅の間に位置し、都心のエリアの中にあります。歴史的なまちなみが残った、堺の歴史文化を代表するエリアであるため、環濠の水辺や歴史的なまちなみを生かした堺ならではの魅力を創出していき、歴史文化に触れる機会や新たな魅力の創出ということで国内外から人が訪れる、愛着と個性のあるエリアにしていくことをコンセプトとしています。
大阪市に近い海辺で、J-GREEN 堺という国内最大級のサッカーのナショナルトレーニングセンターがあります。ここでは、なでしこリーグや学生サッカーの試合も多数行われており、年間約80万人に訪れていただいています。人工ビーチはビーチバレーができるように整備されており、基幹的防災拠点のある先端緑地には、海釣りテラスやドッグランなども既に整備されています。このエリアはスポーツをキーワードにしてつないでいこうという発想でイメージしています。
グランドデザインの説明は以上です。続いて、計画公表後の各エリアの取組状況をご説明します。グランドデザイン策定後、都市計画マスタープランを令和3(2021)年7月に改定しております。グランドデザインに示したイメージや方向性をもとに都市計画マスタープランを改定して、これに基づいて各拠点でのまちづくりを現在進めているところです。
こちらは大阪府、大阪市、堺市の三者で令和4(2022)年12月に策定した「大阪のまちづくりグランドデザイン」というもので、本日パンフレットもお配りさせていただいています。この中で堺市に関係する部分をご説明します。
このグランドデザインは、大阪が東西二極の一極を担う「副首都」としてさらに成長・発展していくため、大阪都市圏全体を視野に2050年を目標に、大阪のめざすべき都市像や方向性を示すものとして策定したものです。「このグランドデザインを羅針盤として」という表現を使っていますが、これを大きな方向性として、民間の活力も引き出しながら、多様な主体が一体となって、大阪全体のまちづくりを推進すると示されています。
まちづくりの基本目標は「未来社会を支え、新たな価値を創造し続ける、人中心のまちづくり」と掲げています。将来のまちのイメージとしてパースを示していますが、スライドの左上が都心部です。その右二つが主要駅周辺やもう少し身近な駅周辺。下の段では郊外住宅地、ベイエリア、周辺山系ゾーンといった暮らしのイメージを示しています。
大阪を取り巻く都市構造を整理しています。府域の都市として都心部を貫く東西・南北都市軸や、放射方向に広がる8つの都市軸および中央環状都市軸を位置付けています。府域全体のゾーニングとしては、大阪都心部、その都市部周辺、郊外部、ベイエリア、河川空間、周辺山系といった6つのゾーンを設定しています。
広域レベルでは、広域的な都市構造を生かした都市圏の形成として、スーパー・メガリージョンの西の核、世界のゲートウェイにふさわしい都市圏の形成を図るとしています。府域レベルでは、マルチハブ&ネットワーク型都市構造の形成としていろいろな拠点を位置付けています。
人口が減少していく時代において、全国的にも集約型都市構造が言われている中で、これを大阪府のまちづくりの方向性として示すのが、マルチハブ&ネットワーク型都市構造という表現になっていると捉えています。
ここに大阪のまちづくりグランドデザインにおける5つの戦略と、取組の方向性を示ししています。
戦略1は「成長・発展を牽引する拠点エリアの形成」です。広域的な都市構造、都市軸、ゾーニング、今後のまちづくりの動向等を踏まえて、拠点性を発揮すべきエリアを示し、公民連携のもと新たな民間投資を誘発するとともに、多様な主体の参画や広域連携の取組によってエリア価値を高め、大阪・関西の発展につなげたいという趣旨です。
この拠点エリアについては、「世界で存在感を発揮する拠点エリア」と「大阪の中核を担う拠点エリア」という2種類のエリアを位置付けています。
前者の基本は都心部で、大阪市のエリアが中心ですが、ベイエリアについてもこの「世界で存在感を発揮する拠点エリア」として位置付けられており、その中で堺の都心周辺エリアが位置付けられています。
後者については、都心部の拠点開発の波及や、新型コロナ禍を契機とした多様な働き方・暮らし方を選択できるまちの実現に向けて、都心周辺部、郊外部において10のエリアを設定しています。堺市関連でいうと、10エリアの一つ「南部大阪中枢エリア」の中で、中百舌鳥の取組が位置付けられています。「大阪高野都市軸郊外拠点エリア」には、近畿大学医学部のイメージ図があったり、泉北ニュータウンの取組が位置付けられています。
また、別枠で「経済成長を促す産業拠点集積エリア」というのも示されています。大阪が強みを有する産業の強化ということで、彩都、健都、といった健康・医療産業拠点の形成や、ベイエリアや主要幹線道路沿道等での産業立地の誘導を示したものです。堺市の関連でいうと、イノベーション拠点の形成という項目で、中百舌鳥エリアが位置付けられています。
なお、残りの戦略2 ~ 5については、時間の都合上割愛させていただきます。
「大阪のまちづくりグランドデザイン」に位置付けられている堺市のエリアについて簡単にご説明します。この辺で「堺グランドデザイン2040」をつくって以降の状況がある程度、ご説明できるかと思います。
まず堺都心周辺のエリアですが、令和5(2023)年5月に「堺都心未来創造ビジョン」を策定し、このエリアに成長・発展をけん引する拠点エリアを形成すべく取組を推進しています。この「堺都心未来創造ビジョン」では、目標年次を堺市のグランドデザインと合わせて2040年としています。
令和7(2025)年の大阪・関西万博、なにわ筋線の開業、そして2040年度頃には南海高野線の高架化といった契機が様々ありますので、それらを捉えて、堺都心周辺エリアをより魅力的なエリアとしていきたいと考えています。このような多方面からのアクセス性の向上の話がいろいろありますので、来街者の増加も期待したいところです。
元々の堺都心の位置付けは、南大阪都市圏の中心として商業・業務・文化機能などの多様な都市機能の集積を図って、魅力的なエリアをめざすというものです。それから大仙公園エリアや環濠エリアといった歴史資源も集積しているので、そういったところも活用していく必要があると考えています。
ここでもパースをいろいろと示しており、こういうものをめざしてやっていきますということを、もう少し具体的な事業も見ながらお伝えしているものです。
堺旧港では、海の見える階段式の護岸や、隣接する宿泊・賑わい施設で人々が海を感じて憩い・交流しているイメージです。
堺駅では、関西国際空港と国土軸を結ぶ、関西の広域的なアクセスの中心、堺の玄関口として、国内外からの交流が生まれているイメージです。
堺東駅前周辺は、連続立体交差事業を契機に、堺の顔として一新された駅街区で、旅行者や買い物客など多様な人が交流・滞在しているイメージです。
市役所北側の大小路筋では、自動運転などの先進技術を活用して、バリアフリーな移動環境の実現、快適性・安全性を図るSMI 都心ラインが走行する車道・広い歩道・広場が一体の空間となったウォーカブルなシンボル的空間で人々が憩い交流しているイメージです。このように、最初のグランドデザインよりはやや事業に近づいたイメージになっています。
SMI は、堺・モビリティ・イノベーションの略称であり、交通という切り口から、環境、健康、福祉、観光、産業振興といった多様な分野で堺都心の魅力を向上させようというものです。
主な取組として、公共交通とシェアサイクル、次世代モビリティの活用、賑わいのある滞留空間の設置によるウォーカブルな都市空間の形成、そして最新技術の活用、施設改良、阪堺線とSMI 都心ラインとの乗り継ぎ・利便性の向上、バリアフリーな都市空間の実現などがあります。都心だけではなく、都心部および美原区辺りの拠点をつなぐネットワークをつくっていくこともこの中で示しています。
このような取組で、ウォーカビリティの向上はもちろん、便利・快適でかつ面的な移動環境の形成をめざしています。
泉北ニュータウンは南海なんば駅まで電車で約20分と交通利便性が高く、大型商業施設が充実していて買い物に便利な地域です。また公園・緑道が多く、一人当たりの公園面積は大阪府平均の約4倍、全国平均でも約2倍で関西トップクラスのエリアです。
いろいろな魅力のある地域ではありますが、その一方で、同時期に多くの住宅が計画的に整備されたニュータウンなので、一斉に高齢化が進んで人口が減少してきており、施設自体も老朽化が進んでいるという側面もあります。また、公的賃貸住宅が多いエリアなので、現在の住宅ニーズに対応できておらず、新しい機能を導入するための場所もなかなかないといった課題があります。
そこで「SENBOKU New Design( 泉北ニューデザイン)」という計画をつくり、「かつてのベッドタウンから、より豊かに暮らせるまちへ」という理念を掲げ、10年後のまちや人の将来像を示していろいろな取組を進めているところです。
このような中でUR や、公社、府営住宅のような公的賃貸住宅を活用したまちづくりを進めるためにも、関係者の皆さんと協議会を構成して泉北ニュータウンの公的賃貸住宅再生計画をつくり、建替えに伴って創出される活用地というものを使っていろいろなまちづくりを今後進めていくことになっています。
なかもず駅が大阪メトロの始発駅でもある交通結節点ということを先ほど来お話していますが、周辺には産業支援機能や大阪公立大学中百舌鳥キャンパスがあります。特に大阪公立大学は、今後中百舌鳥キャンパスで工学、農学、現代システムの分野が配置される計画になっているともお聞きしており、工業高等専門学校も同キャンパスに移転されるというお話もあるようです。このようなことを契機として、産学官が連携して中百舌鳥エリアをイノベーションの拠点として発展させるために、事業者支援などソフト面の取組と駅前広場再編などのハード面の取組の両輪で進めているところです。
産学官連携の組織として、令和3(2021)年2月、大阪公立大学副学長を座長に民間事業者11社を含む17団体が参画する「NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム」が設立され、いろいろ取組を進めています。
ソフト面の取組として、産業支援機関や日本政策金融公庫、大阪公立大学など、中小企業や起業家などの事業者をサポートする機関が集積しているエリアであるため、経営相談、研究開発、ビジネスマッチングなどを通じて、新しい事業取組の創出に向けて各主体が連携してサポートしています。
ハード面の取組としては、駅前広場の再編を検討しています。中百舌鳥駅前にある北側広場は、土地区画整理事業で約20年前に整備されたものですが、南海高野線と大阪メトロ御堂筋線との乗り継ぎ利便性に課題があったり、駅前広場の利用者が多いにもかかわらず集客施設が少ないため賑わいにつながらない、といった課題がありました。
よってそのような拠点にふさわしい賑わいや活力を感じられる駅前空間の創出と乗り継ぎ改善を合わせて解決しようと、都市計画で定められている施設の変更も含め北側交通広場の再編のために検討を行っているところです。
再編にあたっては、「利用者の利便性向上に資する乗継改善」「公民連携による賑わいや魅力の創出」「居心地がよく歩きたくなるウォーカブルなの駅前空間の形成」という考え方で進めています。
泉北ニュータウンについて、もう少し具体的な取組をご紹介します。泉北ニュータウンでは、「堺グランドデザイン2040」以前からいろいろ検討され、進められていた事業もありますので、その中の具体例をいくつかお話いたします。
先述の「SENBOKU New Design」は、「かつてのベッドタウンから、より豊かに暮らせるまちへ」、将来にわたって多様な世代が快適に住み続けられる「持続発展可能なまち」をめざしています。
スマートシティ戦略として、堺市の中でも泉北ニュータウンが重点的に取り組んでいるエリアです。スマートシティは課題解決のツールであり、「Live SMART, Play SENBOKU」 をキャッチフレーズにして暮らしを愉しむことのできる価値創造、地域魅力の向上をめざします。“アソビ”と書いていますが、余白の時間と魅力的な都市空間を合わせてそう称しており、“アソビ”のあるまちをめざして取り組んでいます。
泉北でも「SENBOKU スマートシティコンソーシアム」というものができています。スマートシティの実証事業の一つとしてAI オンデマンドバスを運用しました。これは既存の巡回バス路線がない、あるいは廃止された地域を運行エリアとして、令和5(2023)年1月から2カ月間の期間で実施しましたが、利用者の方からは「外出の促進につながる」「継続して実施してほしい」といった声があり、同サービスに対する満足度や重要性は非常に高いものでした。
そこで令和5(2023)年10月から第2弾として、期間と運行エリアを拡充して実証事業を実施しています。利用者は事前にアプリ等を使って乗降場所、時刻、人数を予約します。1乗車300円、停留所は50カ所、運行時間は9時から18時となっています。
何度か触れておりますが、泉北ニュータウンは計画的に開発した地域であるためほとんどの場所の土地利用が決まっており、なかなか新しい都市機能を導入することが難しい状況です。
こういった中でまちびらきから50年以上が経過し、新たな機能を導入するにあたっては、公的賃貸住宅を更新するときにこれを集約して、そこで創出される活用地を使っていくのが今後の方向になります。この活用地に住民の暮らしを支えるいろいろな新しい機能を導入することで、持続可能なニュータウンをめざします。
これは、泉北ニューデザイン推進協議会という会議体が令和4(2022)年1月に策定した活用地のコンセプト案です。今後の10年間で約20ha の活用地が公的賃貸住宅の建替えに伴って生み出される予定になっているので、こうした方向性をあらかじめ示して、全体でバランスのとれた機能導入をめざしています。
こちらは団地再生の取組で、既存ストックを活用した事例です。内装をフルリノベーションして若年層のニーズにも合ったものを供給する、「先進的住戸リノベーション推進モデル事業」として、団地事業者と連携して実施しています。
若年層の方の転入促進にもつながっています。大阪府住宅供給公社の「ニコイチ」も有名で、平成26(2014)年以降、大阪府公社では41戸、UR では28戸のリノベーション住戸が供給されています。また、居室を住戸以外の目的に転用するコンバージョン事業も実施されています。大阪府住宅供給公社の茶山台団地では、住戸をカフェ兼お惣菜屋に転用した「やまわけキッチン」、DIY を実際に教えてもらいながら体験できる場所「DIY のいえ」などがあります。UR 泉北桃山台一丁目団地では団地集会所を地域のコミュニティ拠点にコンバージョンした「ももポート」があります。
泉ヶ丘駅では、「泉ヶ丘駅前地域活性化ビジョン」のもと、将来像の実現に向けた取組が進行中です。賃貸住宅の建替えおよび活用地創出や、駅前商業施設の建替え、近畿大学医学部および大学病院の開設、統廃合された小学校跡地への学校法人の誘致、そして駅近くの大蓮公園におけるPark-PFI 事業などが実施されています。
令和7(2025)年11月には近畿大学医学部等が大阪狭山市から泉ヶ丘駅前地域に移転してきます。この大学用地は元々堺市の都市公園や大阪府営住宅の土地でしたが、それを市・府から近畿大学に売却し、現在は大学の建設に合わせて、隣接する公園・緑道・駅からの歩行者動線との整備を進めているところです。近畿大学が立地することで交流人口が増加し、また病院なので市民福祉の向上・健康増進に寄与するものと期待しています。
大蓮公園は、Park-PFI 制度を活用して民間事業者を公募し、閉館した旧泉北すえむら資料館の内装をフルリノベーション後、新たにカフェやコミュニティスペースを備えた複合施設に転用する事業を行っています。カフェ利用や、自由に本を読んだり、公衆Wi-Fi を利用してテレワーク等もできる施設になっています。この写真のように地域住民主体のマルシェも定期的に開催されており、公園空間の賑わいを生み出していただいています。これがリノベーションされた施設の内部などです。
栂・美木多駅前は、平成31(2019)年4月に駅前商業施設が完成して、令和(2020)2年9月には原山公園がリニューアルするなど新たな土地利用・転換や機能導入が進んでいるエリアです。同駅前には堺市の南区役所も位置しています。こうしたものに合わせて、安全性・利便性・快適性の向上に向けた駅前再編整備を行い、駅前地域の魅力創出に取り組んでいます。
光明池駅は和泉市との市境にある駅で、駅前政策の方向性を示した「光明池駅前地域活性化基本方針」を策定したところです。「居心地のよい暮らしの拠点・光明池」を将来像として、これから民間活力導入や公共施設の利活用の促進に取り組んでいくところです。
本日ご紹介しました「堺グランドデザイン2040」をはじめ、各計画でお示しした将来像を実現していくために、堺市も頑張って取り組んでいるところですが、当然堺市だけの力では全てを達成することはできません。
中でも、民間活力を使うあるいは公民連携といったフレーズがよく出てきているかと思いますが、今後もこのような機会を捉え、「堺市はこういうふうに考えています」と皆様にもお伝えしていきたいと思っています。こういったところで協力・連携しながら、よりよい堺市となるように取り組んでいきたいと思っており、また皆様とも一緒に進めていきたいところもありますので、よろしくお願いいたします。
最後に一つPR をさせていただきます。チラシも添付しておりますが、イノベーティブ創出拠点と位置付けている中百舌鳥で、今週の日曜日(10/22)に「未来を創るイノベーティブ都市アイデアソン 堺市× PLATEAU」を実施します。
国土交通省で進められている3D 都市モデルを堺市でも作成しました。堺市でもどんなふうに使っていくか考えているところですが、これは全国同じデータ形式で整備し、オープンデータとして公開されているので、民間事業者の方にも活用していただけます。そこで国土交通省と連携し、堺市でアイデアソンとして、この3D 都市モデルを使ってどんなことができるかを皆様にも考えていただくイベントを実施することになりました。ご興味があればぜひご参加いただきたく思います。
以上で私の話を終わらせていただきます。本日はご清聴ありがとうございました。