-学識者による研究レポート-
阪口 葉子 氏
大阪国際大学短期大学部ライフデザイン学科トキエア株式会社 取締役会長
トキエアは、2020年7月29日設立の航空会社で、代表取締役社長は、長谷川政樹です。筆者は取締役会長を務めています。2023年3月31日に、国土交通省東京航空局より、航空運送事業許可を取得し、日本国内における独立系航空会社としては、15年ぶりの新規航空会社としてスタートを切りました。
コーポレートメッセージは、「夢をあきらめるな!新しい挑戦の架け橋に~Ready for take off~」です。利用しやすい価格と、より良いサービスを提供する航空会社であることを常に意識し、両方を可能にする「ハイブリッド航空」を展開します。就航路線は、新潟を拠点として、今後、札幌(丘珠)、仙台、中部、神戸、佐渡の順に就航です。
2023年11月30日現在、約140人の社員がおり、パイロット・客室乗務員・運航管理者・整備士他、ほとんどが航空会社での経験豊富な人々が集まっており、利用者に喜んで頂ける航空会社として成長することを目指しています。
使用機材は、ATR72-600(72名乗り)2機で、2024年秋以降に3号機を佐渡から関東圏に就航予定です。JA01QQ は、2022年11月5日に新潟空港に到着し、JA02QQ は2023年1月18日に那覇空港に到着後、MRO での点検や駐機を経て、同年3月17日に新潟空港に到着しました。
2号機(JA02QQ)は、日本初となるカーゴフレックス対応型で、必要に応じて、最大旅客定員72席を、一夜にして44席に減らすこともできます。日本でこの機材を導入したのはトキエアが初めてです。
関東圏に就航予定の3号機は ATR42-600 S で、短い滑走路でも離着陸できる日本発の STOL(短距離離着陸)型です。同機はプレミアム・エコノミー12席/エコノミー34席の計46人乗りとなります。
エアライン・コードについては、IATA の2レターコードは BV で、「ブラボー・ビクトリー」 を意味し、3レターコードは「TOKI」の頭3文字を取って「TOK」です。また、機体記号にある QQ は社内公募で決まりました。トキエアがモチーフとしている新潟県の県鳥で佐渡島に生息する朱鷺の目で、飛行機の尾翼は、朱鷺が翼を広げて羽ばたく姿です。
佐渡空港は1958年に開港し、約65年の歴史がありますが、2014年3月 から今日までの約9年間、航空便が途絶えており、佐渡の人々の熱い思いを受け止め、2024年後半には、上述の ATR42-600を使用し、佐渡から関東圏への直行便を就航予定です。これらの機体広告も募集中で、既に複数社から申し込みを頂いております。
2023年9月24日「リアルと DX」をテーマに社長の長谷川も佐渡空港にて、第1部では、元アルペンスキーの選手で新潟市在住の皆川賢太郎氏、第2部では、佐渡市在住の元ラグビー日本代表の山田章仁氏とのオンラインでのトークイベントを行い、佐渡の人々もこのイベントを楽しまれました。
同社の取締役会長を務める私自身も、佐渡の旅館の女将からの依頼で、「旅館の女将のインバウンド向け英会話レッスン」を行いました。その他、子供たちが、ランプ作業時に着けるマーシャラーのユニフォームや、客室乗務員のスカーフを巻いたりして、記念撮影も大いに盛り上がっていました。また、佐渡空港上空をトキエア機が旋回し、多くの島民の方々が空を見上げて喜ばれました。
この日、佐渡空港で販売のトキエアの「トキどきバーガー」と、クラムチャウダーは、完売となりました。「トキどきバーガー」は、トキエアと「よね蔵」様との共同開発で、弊社の「トキカフェ」で販売しました。新潟空港のトキカフェでは、佐渡のマサニコーヒーや、JA 佐渡のアイスクリームなども販売しており、今後就航する各空港でも「トキカフェ」を展開してまいります。大手航空会社ラウンジとは異なり、弊社便を利用されない方々も、気軽にご利用いただけます。
現在、機体見学会には、株主、各種団体、市町村の方々向けに行っており、12月7 ~ 8日には、毎年恒例の羽田空港第1ターミナルでの PR イベントも行いました。
8月中旬には、台風などの影響により、実証飛行を中断しておりましたが、9月11日に再開し、9月25日の飛行をもって、全行程の試験が終了となりました。これは、様々なケースを想定しての飛行で、ほぼ毎日、新潟空港から札幌丘珠空港間の1往復か2往復というスケジュールでした。
トキエア社員が乗客として乗り込み、国土交通省東京航空局の審査官複数名も乗りこまれました。設定された内容は、毎回違い、例えば、緊急着陸、減圧による緊急降下、緊急着水、発動機不作動、機長の機能喪失他で、これをどのように対応するかが審査されました。
機上だけでなく、地上でのチェックインカウンターまわり、事務所でのマニュアルの検査も行われました。11月初めには、2機ともに、飛行機の車検である耐空検査を終え、次のステップである重整備についても、提携先であるエアアジア台南の協力のもと、順次行われております。
現在、就航前の最終段階に入っており、今後、就航までに、残されたプロセスは、整備規程の差し替えを含む全章を、国土交通省東京航空局に提出して、認められれば、就航となります。予約システムの構築は、すでに終えており、運賃の種類も8月にインターネットで公表しております。
トキエアの運営母体である Toki Aviation Capital 株式会社は、地域航空ネットワークの充実と空港を核とした地域の産業振興に取り組んでおります。例えば、新潟空港近くに、航空機パーツ工場の設置や、ショッピングモールの誘致などを、新潟県や空港会社をはじめ多くのステークホルダーと協力して実現を図ってまいります。
就航地域間の連携を促進することにも力を入れております。例えば、11月26日には、札幌で約150年の歴史ある日本最古の洋館「豊平館」で、司厨士協会主催による北海道と新潟県の食材を使っての料理教室が行われ、私もトキエアの進捗などについてお話させて頂きました。
新潟市と国土交通省、防衛省、地方自治体との協力を通して、職業紹介業、労働者派遣業も行っております。航空人材の派遣及び紹介、航空関連マニュアル等の提供なども行ってまいります。また、地域航空の役割としての災害・医療へのサポート、空港民営化への支援・調査、および周辺ソーシャルビジネス開発業務、 観光資源開発等、地方創生、コンサルティング業務も行って参ります。
航空事業の会員制ファンコミュニティ「CLUB TOKI」の運営業務を行っており、11月に、ファンコミュニティのメンバーの方々や、株主向けに、新潟空港に駐機中の機体見学会を行っています。今後、新規航路開拓に関する調査、仕事体験 ・広告プロモーション・最新テクノロジーの導入・防衛省パイロットの活用・魅力ある街づくりに積極的に挑戦してまいります。また、大学との連携も活発化させており、現在国立大学2校と、私学3校との産学連携協定を結んでおり、5校で連携して、より良いサービスへのアイデア出しや、楽しいイベントなどを考えてまいります。
就航するまでには、東京航空局の指導の下、前述の実証飛行、耐空検査他、多くの要件があり、これらが遂行された後、整備規程の提出、航空券販売、その他調整事項の遂行、関係各署との連携となります。
2023年11月29日10時に、メディアの方々にお集まりいただき、社長の長谷川から、2024年1月31日に、新潟から札幌丘珠空港に就航することを発表いたしました。現在、弊社のパイロット、客室乗務員も全員経験者ですし、殆どの社員が航空に精通しております。安全運航を第一に、お客様に「私たちの航空会社」と思って頂けるような会社であることを目指してまいります。