-関西空港調査会主催 定例会等における講演抄録-
①中村 俊之 氏
岐阜大学工学部 准教授
②松島 格也 氏
京都大学大学院工学研究科 准教授
●と き 2023 年 7 月 19 日(水)16:00 ~ 17:00
●ところ 大阪キャッスルホテル 7 階 松・竹・梅の間(オンライン併用)
発表1
岐阜大学工学部 准教授
中村 俊之 氏
発表2
京都大学大学院工学研究科 准教授
松島 格也 氏
これまでは、と言ってももう10年、20年以上前ですが、例えば私が子どもの頃の父親の世代では、当時土曜日は「 半ドン」でしたから、週5日と土曜日、少し郊外の住居地域から都心部へ通勤していました。大体みんなが同じような時間に電車に乗ってラッシュになるといったパターンが多かったわけですが、最近そのようなパターンは次第に崩れてきており、特にコロナの影響もあって在宅勤務が広がったり、週休3日が出てくるようになったりで、いろんなパターンが生じ始めています。
家族形態にしても、お父さん・お母さん・子どもがいて、場合によってはおじいちゃん・おばあちゃんまで一緒に住んでいる形態は少なくなってきました。家族形態や生活パターンが違えば、必要とするニーズや必要とする施設も結構バラバラになります。そのような状況を踏まえ、どういう都市計画をしていくべきなのかを考えたいと思いました。
そのために、まずは我々の生活パターンや居住者から始まって、そのパターンがどれぐらい多様化しているかをみます。後半の観光客という部分で少し触れますが、そちらでも移動のパターンがどれぐらい変わっているかをみます。
そしてそれを踏まえて、多様な生活パターンに対応した計画論ということで、各施設やサービスへのアクセシビリティをどう評価するかという二つ目の部分に入ります。
一つ目のほうでは、生活パターンを Optimal Matching 分析というツールを使って分析します。詳細は後述いたしますが、基本的には人々の時間の使い方です。何時に起きて、学校へ行って友達と会って、帰りにご飯屋さんに寄って帰ってくる、といったように日記のような形で記録をつけてもらい、その皆さんの時間の使い方が似ているか似ていないか判断します。
「似ている・似ていない」を判断する上で着目したのが、時間の拘束性です。24時間のうち約3分の1が睡眠時間だとしても、それ以外の約16時間は当然いろいろな時間の使い方があります。自由時間というのはそれなりに楽しめるのでよいのですが、先述のように、例えば仕事帰りに子どもを拾って、スーパーに寄って帰って来るといったようなことをする必要があり、かつ時間に追われているようなものを、「時間の拘束性を有する活動」と定義します。
したがって、そのような時間の使い方の内容が、拘束的か否かというところに着目して、自由時間同士はそれなりに近いが、拘束的な活動とそうでないものについては、分類して距離があるとカウントするという考え方です。
それに基づいて多様化に対応したセキュリティ評価を行います。まずはそれぞれの場所がいろいろなサービスに対してどの程度アクセス性がよいのか。例えば天満橋駅は職場には近いが小学校には少し遠い、病院はそれなりにある、といった状況です。
アクセシビリティだけなら、先ほどのオレゴンやパリで出てきたような考え方と同じなので、まずそれぞれの場所がどのようなアクセス性を持っているかを評価した上で、今度はそれがどんな生活パターンの人にとってアクセス性がよいのかをみます。先述のように仕事の後に子どもを拾ってスーパーで買い物をして帰ってくる人にとってみれば、保育所、職場、スーパーが必要で、それ以外の介護施設などはあまり必要ではありません。
つまり、その場所自体もいろいろな生活パターンの人ごとに評価が違ってくるのでそこを考えるのが二つ目の点です。