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各界の声

関西国際空港の容量拡張に向けた新たな飛行経路案の受入れについて

勝井 健二 氏

大阪府政策企画部成長戦略局空港戦略推進監

 関西国際空港は、本年6月の外国人旅客数が開港以来過去最高となる162万人を記録するなど、新型コロナウイルス感染症の影響からは完全に脱し、来年4月から始まる2025年大阪・関西万博に向け、確実に成長軌道に乗りつつあります。このような中、本年7月、関西の官民トップからなる第14回関西3空港懇談会が開催され、26年ぶりとなる容量拡張、現在の23万回から30万回(1時間あたりの処理能力では45回➡60回)に引き上げる新たな飛行経路案の合意に至りました。これは、大阪・関西にとって、2025年万博の成功のみならず、その後の成長を支える最も重要な成長基盤となるものと考えます。
 これまでの経緯を簡単におさらいすると、議論のスタートは2018年12月の3空懇。翌年には短期・中期の課題と取組みを合意しますが、その後、新型コロナの世界的流行により、関空は開港以来の危機を迎えます。ようやく感染状況が収束しつつある2022年9月の3空懇では、3空港全体で将来50万回を確保すること、そのため、2025年万博までに関空の容量拡張と神戸空港の活用を目標に、国に対して、必要最小限の範囲で現在の飛行経路を見直すよう、要請いたしました。その後の国からの新経路案を踏まえ、8月には、環境、管制、交通工学、公共政策など様々な分野の有識者からなる環境検証委員会を設置し、客観的・科学的見地から環境面での影響やその改善策の検討を開始したところです。
 委員会は計3回開催し、現地調査や地元の意見聴取などに取組んだ結果、本年1月の中間とりまとめにおいて、新経路案は3空懇の要請に応じた内容であり、かつ環境基準に抵触しないことを確認する一方、多数寄せられた地元の不安や要望に応えるため、「運用時間の制限」、「高度の引き上げ努力」、「環境監視体制の強化」、「空港と共生し、ともに発展する地域づくり」、「想定外の事態が発生した場合の再検討」など、9項目からなる国・地域等への提案を行いました。
 本年3月、国からの満額回答を受け、関係府県と空港会社は協力し、短期間ながら、地元調整を精力的に進めてまいりました。その結果、5月には府知事が会長を務める「関西国際空港の飛行経路問題に係る協議会」を開催し、泉州9市4町の理解と協力を得るとともに、6月には、兵庫県と淡路島3市との意見交換会が行われたところです。これら結果を踏まえ、7月の3空懇において、「「公害のない空港」という海上空港の基本理念の下、地元の意見、要望を真摯に受け止め、最大限の配慮を行うことを前提に、関西の成長にとって必要な新飛行経路案の導入に合意する」に至った次第です。
 2018年の議論開始から6年、途中のコロナ危機は息をこらしてなんとか乗り超え、ようやくたどり着けた、というのが正直な実感です。地元自治体や住民の皆様の理解と協力に深く感謝申し上げるとともに、国、県、空港会社、経済界など、これまで粘り強く合意形成に取り組まれてきた関係者の皆様に、心から敬意を表したいと存じます。今後も、関空は大阪・関西の成長を支え続けるとともに、「公害のない、地域と共存共栄する空港」であり続けたいと思います。

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