京都・大阪間の京阪沿線は観光地も多く、この秋は久しぶりの賑わいを見せました。特に京都方面では、インバウンド観光客のご乗車も目立つようになっています。当社グループの各ホテルも順調に稼働し、一部ではインバウンド比率が 8 割を超える状況ですが、その一方で、再びオーバーツーリズムの問題が取りざたされるようになりました。
東山や嵐山といった代表的な観光地への一極集中を防ぐためには、訪問先の分散が必要です。当社沿線に目を向ければ、京都南部の宇治や伏見、洛北の貴船・鞍馬や大原など、歴史と文化が集積された素晴らしい観光資産が多くあります。今後、京都が持続可能な観光地として発展するには、こうした場所の魅力を発信し、その魅力に触れてもらうことが必要です。
当社では、これからの観光は単に現地を訪問するだけでなく、テーマ・ストーリー性の高い体験の提供が不可欠と考え、長期戦略構想の主軸戦略の一つに「体験価値共創」を掲げています。「共創」としているのは、行政や地元の方々、他の事業者との連携が不可欠であると考えているからです。例えば、琵琶湖疏水を船で巡る「びわ湖疏水船事業」においては、その実現に京都市や大津市にもご尽力もいただき、当社グループも運営に参加しながら、2018 年から本格的な運行を実現しています。現在ではなかなか予約が取れないほどの人気コンテンツとなりました。今後も、沿線の観光資産を当社グループの既存事業や新規事業と組み合わせて、「京阪ならではの体験価値」を共創していきたいと考えています。これにより、沿線に新たな人の流れを創ることができれば、オーバーツーリズムという社会課題を解決しながら関西の観光をより魅力的なものとし、さらに多くの方が関西を訪れることにつながります。
大阪市内においては御堂筋線に代表されるように南北の人の動きが活発ですが、京阪線は東西に走ります。京橋、淀屋橋、中之島と東西に連なる拠点で、地域の特色を活かした都市開発を推進することで、この東西軸での、新たな人の流れの創出にも取り組んでいます。現在、中之島で開発に参画している未来医療国際拠点整備事業は間もなく竣工を迎え、来春には「中之島クロス」として開業することが未来医療推進機構から発表されました。ここでは未来医療の産業化のほか、国内外の患者への未来医療の提供がなされることがコンセプトに掲げられています。一方、中之島から西に位置する夢洲では、万博後の会場跡地を国際医療拠点として活用する方針が大阪府により示されており、両者の動きが連動すれば医療ツーリズムを軸とした東西の動きが生まれるでしょう。こうした動きを活性化させ、東西軸での新たな人の流れの創造し、関西の活性化に寄与していきたいと考えています。
新たな人の動きを生み出すのは、いつの時代も交通事業者の使命です。再び関西に多くの人が訪れる時代となりましたが、その時代の要請に応える取り組みを進めてまいります。