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一般財団法人 関西空港調査会

各界の声

広がる空の玄関

長尾 亮太 氏

神戸新聞編集委員

姫路の訪日客

 私がいま勤務している姫路では日々、たくさんの訪日外国人旅行者を見かけます。
 訪日客の目当てである姫路城は2023年度、外国人入城者数が推計で約45万に達し、過去最多を更新しました。
 まちでは、外国人に照準を合わせたさまざまな商品やサービスが生まれています。町家を活用した宿泊施設が開業したり、和菓子店が菓子づくり体験教室を開いたり。神姫バスは瀬戸内周遊バスの運行を始め、訪日客に好まれる車両の導入やウェブサイトのリニューアルに取り組むタクシー会社も現れました。
 城内を外国語で案内するガイドさんたちも大忙しです。ガイドさんによると、訪日客が姫路城を訪れるきっかけはさまざまですが、意外と多いのが新婚旅行だそうです。門出を迎えた夫婦から思い出づくりの地として姫路が選ばれるのは、地元関係の一人としてうれしく思います。
 これらの経済活動や文化交流を活発に行えるのも、航空産業や、玄関口である空港の支えがあってこそだと感じています。

神戸空港

 神戸・ポートアイランドのさらに南に浮かぶ神戸空港島でいま、新たな空港施設「サブターミナル」が建設されています。既存のターミナルでまかなえない国内線の増便や、海外との間で運航が始まる不定期便「国際チャーター便」に対応するためです。
 この動きを決定づけたのは、22年9月に開かれた関西3空港懇談会でした。神戸空港について「関西、伊丹両空港を補完する空港として効果的に活用する」と位置付けた上で、国内線の発着枠を1日80回(40往復)から120回(60往復)に増やしました。すでに19年に60回(30往復)から80回へ増やしており、既存ターミナルにさらなる増便を受け入れられる余力はありませんでした。
 このときの懇談会では歴史的なことが決まりました。神戸空港で「国際定期便」を運用できるようにしたのです。開始時期のめどは30年前後で、発着枠は1日40回です。
 歴史をたどると関西空港は当初、神戸沖が有力な建設候補地でしたが、1972年に神戸市が反対し、いまの泉州沖に決まりました。そんな経緯があるため、神戸市が06年に開港させた神戸空港での国際便の運用は触れられないテーマでした。ところが関西エアポートによる関西、伊丹、神戸空港の一体運用が18年に実現し、3空港の関係が「競合」から「協力」へ移ったのです。
 これからの焦点は、国際定期便の運用に使う新たなターミナルをどのように整備するかです。
 神戸空港を利用する理由について、かつて私が旅客へ聞き取りしたときに印象深かった声は「空港に着いた後にあまり移動しなくてもよく、搭乗までにかかる時間も短い」というものでした。この特色は、空港を利用する可能性がある人が住む範囲「商圏」の広さに直結すると考えられるため、空港の施設規模を大きくするときにも引き継いでもらいたいです。
 国内線の増便と国際チャーター便に対応する建設中のサブターミナルでは、旅客は搭乗手続きや手荷物検査を終えると、バスに乗って航空機まで移動し、タラップを上って乗り込みます。市には「搭乗橋(ボーディングブリッジ)を使いたい」「体が不自由な人にとってハードルが高い」との声が寄せられており、もっともなことだと思います。
 一方で、もともと「小さく産んで大きく育てる」をコンセプトに誕生した神戸空港でいわば「本丸」と位置付けられるのは、その次に建設する国際定期便のターミナルです。旅客施設に適した「一等地」はそのときのために取っているとみられ、空港の機能強化に伴う一連の整備の成否を判断できるのは、国際線ターミナルができてからになりそうです。
 安全と便利さを両立させながら、関西の「空の玄関」が広がることを願っています。


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