䕃山 秀一 氏
株式会社ロイヤルホテル 取締役会長
我々観光業界は3年に及ぶコロナ禍で大打撃を被った。日本ホテル協会の試算では、ホテ ル業界におけるこの3年間の累積赤字は43年分の営業利益に相当するとのことだ。ただ幸いなことに、関西のインバウンド観光客の戻りは順調で、その勢いは現在も衰えていない。 来年4月にはいよいよ大阪・ 関西万博が開催され、2027年にはワールドマスターズゲー ムズ関西が実施され、2030年にはIR(統合型リゾート)の開業が決まっている。関西において、これほど世界から注目を集めるイベントが続くことは過去にはなかったことだ。
このようなイベントと呼応するように、大阪の再開発事業が活発に動き出している。今年6月に中之島で先端医療拠点の「中之島クロス」が開業した。7月には大阪中央郵便局跡に 大型商業施設「KITTE」が、続いて9月にはうめきた2期と呼ばれたグランフロント横の広大な空き地が、大規模な緑地を伴った「グラングリーン大阪」としてプレオープンした。 リーガロイヤルホテルのある中之島5丁目も区画整理が終わり、どのような街ができるのか非常に楽しみである。これらの施設が大阪の新たな目玉になるのは間違いない。
そして観光インフラに目を向けると、こちらも一気に動き出している。新大阪と関空を結ぶ「なにわ筋線」が完成するとインバウンド観光客の利便性は大きく増すだろうし、淀川左岸線の延伸は大阪の高速道路の混雑緩和に大きく寄与する。京阪電鉄の中之島線の延伸や、 阪急電鉄の十三となにわ筋線、新大阪を結ぶ新線の実現も楽しみである。そして、関空、伊丹、神戸の3つの空港。それぞれの空港にはこれまでの色々な経緯があり、数多くの規制の下で運営されてきたが、関西エアポートが3空港の一体運営を担うことになり、その状況は 一気に変わった。
関空めがけて数多く飛んでくるアジアのLCCのインバウンド観光客が観光資源の豊富 な関西の魅力をアピールしてくれたのが、コロナ前のインバウンドブーム。コロナ後は円安も味方して、欧米から多くの観光客が「当地ならではの体験」を求めて来てくれている。これから関西で始まる数多くのイベントでその評判は定着するだろう。政府は2030年にインバウンド観光客6000万人を標榜しているが、残念ながら海に囲まれた日本は、空港 の受け入れの限界がインバウンド観光客の限界となる。そう考えると、ここ関西が大きな伸びしろを持つ3つの空港を有している意味は大きい。今後間違いなく大飛躍する関西の観光産業が関西経済、ひいては日本経済を牽引することになると信じている。そしてそのキーを握るのはまさに、関西の3空港だ。3空港の今後の展開を期待を込めて注目していきたい。