-関西空港調査会主催 定例会等における講演抄録-
櫻井 康博 氏
一般財団法人日本気象協会 関西支社長
●と き 2023年6月30日(金)
●ところ 大阪キャッスルホテル6 階 鳳凰 ・白鳥の間(オンライン併用)
私は1990年に日本気象協会に採用され、33年間気象一筋にやってきました。関西国際空港様には2期工事の環境アセスメントでもお世話になり、ありがとうございました。
まずはじめに最近の気象についてお話しします。今日こちらにお越しの方々で、最近仕事の上で気象予測が外れて困った経験のある方おられますか。
本当はあったけれども言えないというところがあるかもしれませんが、いろいろと激しい気象現象が起こる中で、疑問を持たれている方も多いと思います。ついては、実際に今どういうことになっているのか、という話からはじめさせていただきます。
「どうも最近、気象が変じゃないか?」というようなことが言われていますが、実際どうなのでしょうか。
最近では、例えば2018年の西日本豪雨や記憶に新しいところでは今年の6月2日、特に和歌山の方で線状降水帯が発生し一部で被害が発生しました。
あるいは温暖化と言いながら雪が降る。ニュースを見ると車が立ち往生したり、高速道路から出られなくなったりしている。今年の1月24日には、JR様でも大雪で大変な苦労がありました。風も大きな関心事です。関西空港様でも2018年の台風21号では大変な被害に遭われました。このような被害を伴う現象が増えているのではないかといったことが言われています。
過去のデータで見てみます。まず雨ですが、これは1975年から2022年までの、全国アメダス地点における50mm/h 以上の年間発生日数の変化です。大体下水道の処理能力が50mm/h を目安にしていると言われていますが、そのような雨の頻度がどうなっているかを見たものです。凸凹はありますが、明らかに右肩上がりで、いわゆる短時間強雨が増えていることが分かります。
これが将来どうなるか?現在はいろいろな計算ができるようになっています。前世紀つまり1980 ~ 1999年とその100年後の頻度がどうなるかを、それぞれのエリア別に解析した資料がこちらです。灰色の方がこれまでの状況、青色が将来を示しており、30mm/h 以上、あるいは50mm/h 以上の大雨が将来どうなるかを示したデータです。計算上も、これから短時間強雨は全てのエリアで増えるだろうと見られています。
もう一つ関心が高いのが台風だと思います。こちらは台風のシミュレーション結果です。縦軸が年間平均出現数、横軸が強さを表しており、弱い台風の方が多く、強い台風になると頻度が下がります。
台風は海面水温が高くなると強くなると言われます。海面水温の上昇が特に大きい場合が赤、小さい場合が青で示されています。将来、弱い台風の頻度は少なくなる一方で、強い台風は増えると見られ、非常に厄介な現象が増加するのではないかとみられています。
これをもう少し詳しく、特に日本周辺を見てみます。猛烈な台風、一番強いクラスの台風ですが、それが存在する頻度がエリアによって変わってきます。いわゆる台風は南の海上で発生して、特にフィリピン沖などで強いというのを見かけることが多いと思いますが、むしろフィリピンの周辺では減る傾向にあり、日本周辺に近づいてくると強さが増すのではないか?そのようなあまり良からぬ予想が立てられています。
実際、台風の発達に影響する海水温も変化しています。これは少し南海上、沖縄の東の過去100年間における海水温上昇の程度です。やはり海水温は上がってきているので、このように海水温上昇イコール台風の強まる頻度も高まっている可能性があります。
しかし沖縄の東に対して沖縄の北側、もっと日本列島に近い所の温度上昇はどうなっているかというと、実は温度上昇の強度が高くなっています。先ほどのエリアが大体100年間で1℃程度だったのに対し、北側の四国・東海沖は1.35℃で約30%上昇しており、日本の近海のほうが海水温の高まりが強まっています。すなわち観測データからでも日本に近づくほど台風は強くなりやすくなっていることが読み取れます。
まとめると、過去の観測結果から見ても極端な現象が増える傾向にあります。「めったにない現象」などと言われていることが、当たり前になりかけているということです。よってこれから先はハードやソフトの対策が必要となります。
私はソフトや情報が専門ですので、情報をどう活用するかという観点で話を進めさせていただきます。
まずこれからの季節はやはり雨が関心事象になることから、雨のリスクについてお話しします。「既往最大値」という言葉はあまり聞きなれないかもしれません。過去に対して今までなかったような雨、観測値を超えるようなものを既往最大値と言っています。難しい言葉ですが、要はこれまでなかったような雨の数値とご理解ください。この活用法についてお話をします。
よく「危険な雨」という表現を耳にします。テレビでも「明日の朝にかけて100mm 降ります」とか「200mm 降ります」とよく言われています。この「200mm」は危険なのか?
例えば高知では、もちろん日雨量200mm は大雨なのですが、7月の1カ月間の雨量は月平年値で357.3mm です。200mm より多く、月の平年値と比べると「たまにはこれぐらい降るよね」となります。一方、大阪の7月の平年値の月降水量は174mm です。すなわち大阪で200mm 降ってしまったら、1日に1カ月の雨量を超えてしまうことになります。
したがって、雨は100mm だ200mm だという絶対値で見るのではなく、「その地域によって危険な数値であるかどうか」で見ていかないと、本当のリスクの把握はできないことになります。そこで既往最大値が重要になってきます。
気象の観測地点は離散的であり地域の細かな分布が不明瞭です。一方2006年以降になりますが、1km メッシュで按分した解析雨量のデータベースがあります。この2006年以降の日本全体のメッシュのデータを蓄積しておいて、今降った雨が2006年以降と比べて記録を更新しているのか、あるいはそれにどれくらい近づいているか、それを既往最大雨量比で見ることによって、災害の起こりやすさが分かることが明らかになってきています。
2019年台風19号の事例について説明します。東日本で大変大きな被害をもたらしましたが、このときの状況がこちらです。
まず左側が、皆様もよく耳にする「24時間最大雨量値」。これを見ると確かに大きな被害を生じた関東地域、多摩川など「広い範囲で400mm を超える雨」が降ったことは分かります。
一方で右側は既往最大比を示したものです。もともと東北はそんなに雨が降る所ではないので、伊豆半島など比較的大雨が降るような所での400mm と、そうでない場所の200mm は危険度がかなり違ってきます。例えば長野で新幹線が水没した千曲川流域は、地図で見ると実際の24時間雨量はそれほど大きくないのにもかかわらず、既往最大値つまり2006年以降に降った雨で見ると1.5倍になっており、かなり強い雨だったことが分かります。
こういったことから、既往最大値はリスクの把握上非常に有効であることが分かってきています。
これが先ほどお話した、6月2日に和歌山で大変な被害が起きた大雨のデータです。
左側は24時間雨量の最大値です。四国のほうから降り初めて紀伊半島、中部地方、いわゆる太平洋ベルト地帯の南側がものすごい雨になっていますが、これを既往最大値からみると、既往最大比が100%以上となったエリアは、ものの見事に被害が起きたところと一致しています。
和歌山では鉄道や道路での被害がありました。東海道新幹線も運休など影響を受け、愛知県豊川から静岡県西部の辺りで大きな被害が出た所はやはり既往最大値を超えています。あるいは関東の取手辺りで住宅街が水没したというニュースがありましたが、まさに既往最大値で見ると実際の災害との関係性がよく分かります。
これを例えば鉄道分野で使うとどうなるでしょうか。インフラの設計基準は計画降雨量でつくられることが多いのですが、既往最大雨量は少し短い年数の雨なので計画降雨量よりも少ない雨量になっています。
両者を監視することによってどのような活用ができるか。例えばこちらの表は縦列が時間を表しており、予測雨量から「計画降雨比」と「既往最大比」がどのくらいになっているかを見るものです。大雨が降ったときに列車を動かした方がいいのかどうか、そういったことの判断指標として使っていただけます。
このように、それぞれの場所に応じた危険度に読み替えることによって、本当に危ないときのリスク回避につなげることができつつあります。
「そうは言っても予測は外れるじゃないか」というのが実感としてあるかと思います。実際に予報は外れることがあります。
とは言うものの、実は年々予測精度は確実に向上しています。その背景として、まず新しい観測機器の導入があげられます。気象衛星「ひまわり」も新しいセンサーを組み込み線状降水帯が把握できるようにすることを計画しています。また、現象把握の科学進歩もあります。そして何と言っても計算機の進歩。より細かく計算できるようになり予測精度向上に貢献しています。
それでも100%正確な予測は難しいというのが実態です。ただし現在は、外れるとしてもどの程度の確率で外れるか、といったことが表現できるようになっています。
そのメカニズムですが、簡単に天気予報の仕組みを紹介します。現在の天気予報は、様々な観測を実施し、陸上に比較し観測ポイントが少ない海上にも観測地点が均等にあったらどうなるかということを一回再計算します。
計算結果は格子状の数値で表され、物理現象の数値計算によって1時間後、10時間後、24時間を予測します。これを天気予報に翻訳して皆様にご提供する、というのが現在の天気予報の仕組みです。
なぜ外れるのか。実はまさにこの観測値を均等に配分するところがみそなのです。先ほどお話した通り、観測値には誤差があるだけではなくて、細かく観測できている所と粗くしか観測できていない所があり、必然的に初期値に誤差が生まれてしまいます。このため最初の計算のステップで違いがあれば、時間が延びれば延びるほど誤差が生まれやすくなります。
なお、そのときの状況によって比較的誤差が収まりやすい場合、あるいは広がりやすい場合があります。このため、その時々の状況に応じた確度を計算できるようになっています。
そもそも最初に誤差があるのなら、大体どの程度の誤差があるのかを最初に計算に入れておけばよい、これがアンサンブル予報の考え方です。
現在、国によってやり方は変わりますが、例えば最初の確からしい値から、ずれるとしたらどのくらいずれるのかを51通り計算しています。そのときの気象の場によって、少々の差があっても、大体結論は同じになる場合があります。これが非常に確度の高い予測値です。それに対して、観測値の状況によっては非常に外れやすくなることがあります。
このアンサンブル予報によって確度の計算ができるので、「当たりやすいとき」「外れやすいとき」による数値を出してリスク対策をとることが可能になっています。
例えば台風のコースではどうなっているでしょうか。先述の2019年の台風19号は東日本で大きな災害が発生しました。この台風は、南から北上して伊豆半島に上陸するという進路でした。台風の発生は10月6日。その3日前の10月3日、このときの51通りの計算がこちらです。かなり予想進路はばらけていますが、台風発生2日前の10月4日になると、何となく予想進路が寄ってきて、まだ台風になる前の段階から「台風に発達しどうも日本列島に近づきそうだ」ということがわかります。台風になる1日前の10月5日になると「かなり影響を受けるのではないか」ということがみてとれます。
色を見ると、赤が950hPa 未満、青が980hPa 未満なのでかなり強い台風がやってくるだろうと。しかも台風が発生した段階では、ほぼかなりの確度でこの台風は来るであろうことが予想されています。
台風19号は早い段階から予測のばらつきが少ない台風でした。一方で予測のばらつきが大きいケースもあることから、バラつきに応じた対策をとることが求められます。
例えばダムの分野ですが、ダムは治水、つまり洪水を防ぎたいという意図がある一方で、発電や農業では水を溜めてできる限り流さず使いたいというように相反する目的があります。
リスク管理上、洪水対策が重要となる場合は、確度の計算の中でも最も雨が降る場合で判断します。一方洪水対策よりも利水、水を使う方に重点を置きたいダムの場合は、最も雨が少ない場合で判断します。
事前に水を流してリスク管理をしたものの、もし雨が降らなかった場合、その後水が使えなくなるという問題が生じかねません。アンサンブル予測活用により雨が最も降らなかった場合どうするか、といった使い方ができるようになりつつあります。
こちらは2022年8月4日、北陸地方の福井県で豪雨が発生した際、前日時点で確度計算し、24時間雨量で150mm を超える確度がどうなのかを予測したものです。この時は、高速道路・一般国道・鉄道全てが通行止めや運休の影響を受けています。
図中の150mm は鉄道の停止規制値に当たる雨量なのですが、確度で見ると実際に災害が発生した箇所の周辺の確度は非常に高くなっていることが分かります。このようなケースでもリスク管理として使えるのではないかということが分かってきました。
続いて風です。風というのは、実は雨よりも非常に局地性が高いです。海上では均等に吹きやすいものの、六甲おろしに代表されるように、吹く場所と吹かない場所の差が激しく、予測も難しいという課題があります。このため道路、鉄道それぞれ規制値は非常にピンポイントになっています。例えばどこどこの橋、トンネルの入り口、何々駅というように、エリアというよりもポイント毎に規制値の場所を決めています。
そして最大瞬間風速です。よくテレビなどで「風速」と言われているのは、平均風速が10分間平均風速なのですが、インフラで必要なのは最大瞬間風速です。どっと吹いたとき、それが設備に影響を与えるのかどうか。しかも最大瞬間風速は平均風速よりも非常に局地性が強い。
それに対して一般のメディアで提供される天気予報は大まかなものであることから、天気予報だけでは、例えば道路を止めた方がいいのか、あるいは鉄道を止めるべきなのかという判断が非常に難しいことがあります。この課題解決のため現在は AI により予測を高度化し運用しています。
今までは、先ほどお話しした平均風速に突風率を掛け、最大瞬間風速は大 体1.5倍 か ら2倍 ぐ らいというところで予測していました。しかし非常に局地性が強いがゆえに、その手法では予測が外れるともありました。JR 湖西線では比良おろという局地風により特急サンダーバードが米原経由になるというニュースを関西の方はご覧になると思うのですが、まさに比良おろしは典型的な局地風で、これを予測するのは困難でした。
このような局地風に対して、実際の観測値を集めて数値計算と照らし合わせ、畳み込み AI手法というやり方で深層学習することによって、予測精度を格段に向上できることが分かりました。このグラフでは、青い線が実際の最大瞬間風速で、緑色が従来の予測、それに対してオレンジ色が AI 予測を示しています。上のグラフが台風の事例、下が低気圧の事例ですが、まさに AI 予測を取り入れることによって、局地的な現象を把握することが可能になってきたという事例です。
こちらは1時間毎36時間先まで瞬間風速・基準値超過ランクを示したものです。横軸は予測時間で、9時、10時、11時……と続いています。
インフラ関係のお客様の場合、規制レベル(徐行や運行停止など)が風速によって決まっているので、それに応じた形に合わせることによって、例えば計画運休に役立てていただくといったようにお使いいただくことも可能になりつつあります。
さらにこれを分布図による提供も可能です。
これは2019年の台風19号の前の台風15号の事例です。房総半島を縦断した台風で、西日本ではもう記憶が薄れているかと思いますが、千葉県が大変な被害を受けました。潮風を受けて停電したり、屋根瓦が飛んだりということがありました。瞬間風速25m/s 以上の風が吹く確率も、アンサンブルを使って確率予報が可能になっています。
これを見ると沿岸部が紫色になっており、非常に強風の吹く確率が高いことが分かります。実際にアメダスの地点から分布図で最大瞬間風速がどのくらい吹いたかを見てみると、実はこちらも50m/s を超えるような所も部分的にはあったのですが、ほぼ確率値と同じであることが分かるかと思います。
赤い円は気象庁の台風の暴風警戒域です。台風が来るとよく「風速25m/s 以上はこのエリアですよ」とテレビのキャスターが説明しているのがこのような範囲になります。テレビで言われている台風の影響範囲は大きく実際の強風域と異なることがわかります。
25m/s の範囲に入っているにもかかわらず、「今回あまり大したことないじゃないか」と思われたことがある方々も多いかと思います。台風も局地的な影響を受けやすいので、実はこの暴風半径の中でも、吹く所は非常に限られたエリアになっているという実態があります。このようなことから、特にインフラの場合はピンポイントでの予測を使っていただくと、運行管理上有用となるのではないでしょうか。
このような情報をもう少しかみ砕いて、リスク情報を日々の経済活動あるいはビジネスへ活用することに関し、物流分野ではどう使っているかについて簡単に紹介いたします。
物流分野も全ての気象でリスクがあります。例えば雨なら、トラックなどがスリップしたり、浸水すると車両の機能が停止してしまったりします。風の場合は車両横転リスク、雪の場合はスリップスやスタックなどのリスクがあります。
全要素に共通するリスクは、高速道路が通行止めになってしまった際の配達遅延などで、お客様に迷惑をかけることになることがあります。
社会は変化し、例えば高速道路などでも事前通行止めとなることがが増えてきました。このキッカケは、東日本大震災時の計画停電にさかのぼります。これ以来、何かリスクがあればインフラの一旦機能を停止し社会の動きを止めた方が結果的にリスクは下がるという考え方に世の中が変わってきています。
JR 西日本様が初めて計画運休したのは今から9年前、2014年の10月でした。当初は批判がありましたが、今ではもう当たり前になってきました。JR 東日本様でも計画運休を実施しています。道路では2019年頃から事前通行止予告を行っています。
今年6月2日の大雨でも JR 東海様、JR 西日本様で計画運休が発表されました。社会的にも、仮に外れてでも止めると言ったほうが、何かあったときのトータルのリスクは下がるだろうということで、やはり社会の動きが変わってきたと言えます。私は、こういうことは非常に良いことだと思いますし、だからこそ情報の活用が必要になってくると考えます。
こちらは我々が民間向けに提供する「GOSTOP(ゴーストップ)」という、“道路を通行できるかできないか(行けるか行けないか)”を予測するインターネットサービスです。縦軸に記載しているのはインターチェンジの名称で、横軸はそれぞれインターチェンジの時間毎に「通行注意」「通行警戒」あるいは「厳重警戒」になりやすい所を示しています。これは2021年の1月、北陸道で大規模な道路の立ち往生が起きたときの実際の予測図です。
実際に、黒で示した所が車両の大立往生が発生したときなのですが、ほぼ24時間前から「どこの区間で通行止めの危険があるか」をお出しすることができるようになってきました。もちろんこれは予測情報なので当たり外れはありますが、ただ漠然とテレビの天気予報を見ているよりは、自分たちが使う道路のリスクを細かく把握したほうがビジネスに使える可能性はあると思います。
これは2020年の台風10号です。九州のほうに接近し、九州の高速道路がほぼ全面的に通行止めになったときに、九州方面への物流にどう使えたかという事例を紹介します。
この台風10号は、実際は左図のような経路でした。先述の通り、我々は台風コースの確度を計算しました。全部で51通りの計算を行いましたが、それだけでは分かりにくいので、シナリオ毎に「どのコースを通りやすいか」について3パターンに分けてお示ししました。このときは、シナリオ3の確度が最も高いという情報を出したのですが、実際はもう少し西のシナリオ2に近い経路でした。ただしこれは9月1日の情報であり、ちょうど熱帯低気圧が発生した直後のものです。この時点で物流会社としては何らかの影響があるだろうと考えに基づいて動いたとのことでした。
次のスライドは「某ビール会社」の事例です。台風10号が襲来する1週間前の8月31日に影響を予測して、9月2日(最接近の4日前)の段階で「配送が停止する可能性がある」ことをお客様にご連絡しました。情報は当然外れる可能性があるのでこの段階では決められないが、とにかく対策をとることにしたとのことです。実際は3日前に、確度がかなり高くなってきたことから物流操業の停止を決定しました。この段階でお得意様へ案内を実施し、グループ内でも同じ対応をされました。
結果として、物流会社はトラックドライバーなどからも評価され、特にお得意先様からは「商品が届かない可能性があることをあらかじめ言ってもらうと心づもりができたためありがたかった」との評価がありました。また営業部門の方が「何かあったときにすぐお客様に謝罪に行き、なぜこうなっているかを明確にお答えできた」とのことでした。このような早期操業停止の判断は、物流関係としてもそれを前提としたオペレーションを講じることができるのではないかといった事例です。
地球温暖化などの影響で極端現象増強時代に入り、残念ながらインフラあるいは事業運営を左右するリスクの高い気象現象は増える傾向にあります。一方で、予測技術だけではなく、いわゆる情報活用術もこの数年非常に高まっています。したがって情報を活用すれば、リスク自体の発生は防げなくとも、結果的にリスクを避けることができるというところに今は来ていると思います。
以上で私からの発表を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。