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今月のセミナー

-関西空港調査会主催 定例会等における講演抄録-

進化を止めない 北九州空港

幕 亮二 氏

北九州市 参与(空港成長戦略担当)

●と き 2025年4月22日(火)

●ところ オンライン会場

はじめに

 北九州市の参与を務める幕と申します。本日は、私と北九州空港の縁(えにし)のようなものを混ぜ込みながら、北九州空港の現状や今後の取り組みなどについて、ご紹介させていただきます。

入社3年目

 私は三菱総合研究所に1991年に入社し、3年目に仕事で初めて自身の地元である九州に戻りました。九州での初仕事は入社3年目のことでしたが、第7次空港整備五箇年計画に、九州国際空港を取り上げてもらうために、適地選定の有識者会議(ワイズメンコミッティーと言われておりました)事務局をされていた、九州経済連合会さんをサポートするお仕事でした。
 皆様ご承知の通り、「九州国際空港」が7次空整に載ることはなく、悔しい思いが残りました。そこからは、福岡空港の滑走路増設へと動いていくわけですが、合意形成というものの難しさを勉強させてもらいました。

入社23年目

 この初仕事から20年後になりますが、北九州空港の将来ビジョンを策定する業務を会社から任されました。平成26年のことです。
 実は、このビジョンは未だ現役でして、当時開発中だったMRJ等、航空産業の拠点という将来像が柱の一つとなっています。
 そのことだけでなく、さすがに当時とは状況も変わっているので、新たなビジョンを検討すべきではないかと、個人的には思うところです。
 ビジョン策定時に作成したイメージパースをご紹介します。1枚目が、貨物拠点空港としての北九州空港の姿。2枚目が、先ほど申し上げました航空産業の拠点としての姿です。
 2枚目に関しては夢になってしまいましたが、1枚目については、まさに今このような状況になっています。煌々と照明に照らされ、荷積みの車両が行き交う様子は、まさにこの絵の通りです。このように実現した部分は現状を踏まえ、さらにアグレッシブな将来ビジョンを描くことが必要だと思っています。

航空空港研究会(2017年~)

 関西空港調査会様との関わりについて、お話しします。2017年から開催されている航空空港研究会で、主査の加藤先生の下、西藤先生・朝日先生とともに副査としてお手伝いさせていただいています。研究会の成果を本としてまとめたのが、『航空・空港政策の展望―アフターコロナを見据えて』でして、大変光栄なことに住田航空奨励賞をいただきました。
 同研究会自体は、現在も継続中です。5月22日には航空機リースをご専門とする、大和エアボーン株式会社の広谷社長をお招きし、ご講演いただきます。本日ご視聴いただいております皆様にも、是非ご視聴あるいは会場にご来場いただければと思っております。
 ところで、『航空・空港政策の展望―アフターコロナを見据えて』ですが、同書第12章は私が執筆した部分で、北九州空港について、「空港営業のプロが集う北九州空港」と題して次のように述べています。
 「コンセッション方式による空港経営の民間委託が進む中、行政や出向先企業で培った人脈やノウハウは、各地の空港運営者から汎用的な価値として評価され、転職を嘱望される機会も増えるでしょう。もともと、航空業界と地方自治体との間では、(中略)民から官への人材流動は各地で見られましたが、今後は官から民への人材の移動も含め、さらに双方向で活発化すると予想されます。     
 私が参与として登庁するようになったのも、この本が切っ掛けとなったのだと思いますが、北九州市役所は、通常の市役所とは異なり、貨物しかり旅客しかり、空港営業のプロが育成されていて、そういう人たちが短いサイクルのローテーションで空港の部門に戻ってくるのが特徴です。空港の専門家を育成するための、人事やローテーションが強みになっていると思います。

北九州空港の概要

 前置きが長くなり恐縮です。ここから本題に入ります。まず北九州空港の概要についてご説明します。 

 今の北九州空港は、平成18年(西暦2006)3月16日に新しくできた空港です。旧北九州空港は海上ではなく内陸にあり、滑走路長は1,600 mしかありませんでした。周囲で市街地化が進み拡張の余地がなく、海上空港の建設が計画されました。
 現空港の滑走路は、延長2,500m・幅60mの一本です。図の左側(北側)が北九州市で、南側が苅田町と、空港は両自治体にまたがっています。現在、滑走路を3,000mに延長する事業が行われていますが、延長する方向は南側(苅田町側)となります。スポット数は資料に書いてあるように、大型:2、中型:3、小型:3、貨物専用:2となっています。駐車場は1,780台、全て平置きで整備されています。
 現空港が開港し、来年(令和8年)がちょうど20周年になります。同空港では毎年3月16日には空港感謝祭というイベントを開催しているのですが、来年は盛大にやりたいねという話をしています。

特長・ポテンシャル

 北九州空港の特長、いわばアピールポイントをご紹介させてください。
 まず、九州・中四国で唯一の24時間空港であることです。早朝から深夜まで離発着可能であり、旅客便・貨物便ともに柔軟な受入れが可能です。
 次に、広大な将来拡張用地を活用した、次世代への展開が可能なことです。北九州空港は、関門航路浚渫土砂の埋立地を活用して整備されています。現在も埋め立てが進められており、将来の拡張用地として活用することで、次世代への更なる展開が期待できます。国際航路である関門海峡の浚渫は、これからも永続的に行われる訳ですから、極端に言えば、空港島はどんどん広がっていくということになります。もちろん、ただ広がっているだけで「進化」していることにはなりませんが、内陸の空港と大きく違うのは、「もう土地がない」という状況にならないことです。福岡空港もそうですが、余地がないために滑走路間の距離が取れなかったり、ターミナルビルのセットバックが必要になったりということは、多くの空港で見られます。ポテンシャルという意味では、海上にある北九州空港の特長のひとつと言えます。
 次に、充実した高速道路網があることです。苅田北九州空港ICを起点に、九州・東九州・中国道に接続しており、充実した高速道路網を活かした展開が可能です。北九州空港は、九州の貨物だけではなく中国・四国の貨物も担えることを売りにしています。東九州道が全通してからは、宮崎や大分からの貨物も運べるようになり、背後圏は大きく広がりました。
 また、海上空港であり、船舶の係留が可能な岸壁が整備されていることから、空と海のシームレスな輸送が可能です。空港の直立護岸部分を、港湾区域に入れていただいており、これをシーアンドエア輸送に積極活用する方針をご支援いただいております。
 最後は、背後圏の集積です。産業集積としては、北九州市は、皆様もご存知のように、ものづくり産業の街として発展してきた歴史があり、周辺には自動車・電子部品・ロボット・半導体といったグローバルな輸送ニーズのある産業が集積しています。また、人口集積という点でも、北九州市が昨年(令和6年)に60年ぶりに転入超過に反転したことを、皆様ご存知でしょうか。北九州都市圏のみならず、福岡市をはじめ、大分・下関地域を含めると300~400万人の人口集積があり、大きなポテンシャルと考えています。

新北九州空港整備プロジェクト、土木学会技術省を受賞

 これは北九州空港の到着口を出た左の壁に、土木学会様より表彰を受けた記念として飾ってあるものです。
 先ほども申しましたが、関門航路の浚渫土砂の埋め立て地を、空港として活用したことが記されています。埋め立て処分とこれによる土地の活用という効率化も然りながら、浚渫土砂は含水量が多く沈下の予測が難しいのですが、整備局はじめ土木技術者の皆さんの知恵と努力で初めて、港湾と空港の連携事業が結実したわけです。その挑戦とノウハウの蓄積という点が評価された表彰だと伺っております。

拡張

 現在埋め立て中の70haの第3工区が終わったら、空港の東側で総面積250 haの新たな処分場での埋め立てが始まります。
 第3工区はいずれ造成され土地活用が図られることになろうかと思いますが、広大な土地なので色々な夢が描けると思います。北九州空港の将来ビジョンの柱の中心は、貨物拠点空港です。それゆえに3,000mの滑走路延長事業化を切に願い、行政のみならず経済界も一体となり成った訳ですから、そこに向けて現在も皆一生懸命頑張っています。加えて、将来ビジョンでは柱の一つとして、航空関連産業の集積・拠点を目指すことも謳っています。MRJは残念でしたが、現在も様々なビジネスのアイデアを温めておられる方々が、市役所においでになられます。お話をお伺いしておりますと、とてもワクワクしますが、良いアイデアであればこそ、北九州空港の優位性を、ひいては日本の競争力に繋げられるようなスピード感があるといいなと、これはあくまでも私の個人的な感想です。
 スライドの右下に「稼げるまち」と書いてあります。市長は「稼げるまち」という目標を打ち出しています。そもそも航空需要は派生需要であって、派生需要は、「稼ぐ」という経済活動や、その経済活動を支える人間の営み・交流といった本源的需要に裏打ちされるものです。派生需要と本源的需要を好循環させていくために、空港を戦略的に地域活性化に繋げるビジョンを明確にすべきだと思っています。

利用状況

 次に現在の利用状況ですが、旅客は苦戦しております。コロナ前は着実に旅客を伸ばしておりましたし、このトレンドで伸びれば、国内・国際合わせ旅客200万人も夢ではないなと期待していました。しかし、コロナで一気にその需要が消えました。現在、官民を挙げ復便に向けた誘致・販促活動等に頑張っておるところですが、国際線がなかなか戻りません。平成30年の時点で、北九州空港のインバウンド数は全国9番目で、九州の中では福岡、鹿児島に次いで大きかったのですが、これがなかなか戻らないという状況です。また、定期運航の国内線は羽田便だけなのですが、元々ビジネス需要が他空港よりも相対的に多かったこともあり、リモート会議等の普及によって戻らない、とくに日帰り出張需要については、一時的ではなく構造的な変化と捉えています。
 貨物に関しては、コロナ禍中の国際線旅客便のベリースペースが無い間、定期便に加えチャーター含め貨物専用便(フレーター)の需要が急増し、令和3年度まで大きく国際航空貨物は増えました。その後、令和5年度まで2年連続で減少しておりましたが、昨年令和6年度は、令和3年度の1.7倍の36,000トンの過去最高値となりました。これは、トラックドライバーの働き方改革推進の影響による、従来の陸運中心の物流容量が逼迫しかねないという所謂「2024年問題」に対処すべく、国内の幹線貨物輸送を一部定期航空貨物便で補完しようという、ヤマトグループ・JALグループによる国内航空貨物定期便によるところが大きいです。令和6年4月に2往復4便で新規就航(成田・沖縄路線)後、同8月に3往復6便に増便(羽田路線の深夜早朝便の就航)、10 月に4往復8便に増便(新千歳路線の増便)と着実に拠点化を進めています。北九州空港の輸送サービスが強化され、荷主企業の利便性が大幅に向上するとともに、貨物取扱量が飛躍的に増加しました。
 陸・海・空いずれの輸送モードの重要なノードであり、結節点に位置する北九州市は、物流拠点都市構想を策定しており、荷主・物流事業者様に、持続可能な「新しい運び方」を御提案して参ります。

旅客の取り組み

 国内線定期便は羽田便だけで、スターフライヤーが11往復、JALが3往復です。
 国際線は、コロナ禍を経て、仁川線の令和5年5月再開後、7月・12月の臨時増便期は重点的に利用促進に取り組んで参りました。コロナ前は仁川以外に、釜山・台北・大連とも定期便の運航があり、チャーター便についても務安等あったのですが、北九州空港を拠点とするスターフライヤーも、コロナによる低需要期の供給能力調整は急速に元に戻すことは難しく、機材繰りが難しく未だ復便まで少しという状況です。供給制約上の課題としては、他所同様グランドハンドリングの問題もあります。北九州空港では、地元の西鉄エアサービスさんが現場を担っておられますが、コロナ禍からコロナ後の需要急変に、構造的に人手不足の我が国の労働市場の中で、とくにインバウンド急回復を追い風に新規就航を求める外航LCCさん等のリクエストに、無尽蔵に柔軟対応することは極めて大変なことだと思いますが、市としましても、新規就航に向けた受入れ環境の整備に取り組み、更なる路線拡充の実現に取り組んでおるところです。

県内空港の将来構想H26.11策定(福岡県)

 先ほど、平成26年に北九州市が、北九州空港の将来ビジョンを策定し、現在もそれが現役だというお話をしました。ご存知の通り、福岡県内には福岡空港と北九州空港の二つの空港がありますが、福岡県では、福岡空港と北九州空港の県内2空港を活用し、増大し多様化する航空需要に幅広く応えるための将来構想を、同じく平成26年に策定されています。
 同構想では、「福岡空港の発着枠を超える就航希望航空会社は、北九州空港に誘導しましょう」とか、「北九州空港は24時間空港なので、福岡空港のカーフューでうまくダイヤが引けないような海外便は北九州空港に誘致しましょう」といった、戦略的な機能分担による補完関係で、全体のパイを拡大し成長のボトルネックを回避しようという考えでした。
 補完関係という点では、皆様の記憶に新しいところでは、令和5年2月19日、羽田空港発福岡空港行き日本航空331便が、福岡空港の利用時間に間に合わず、関西国際空港に緊急着陸した後、羽田空港に戻る事案があるかと思います。これを受け本市では、北九州空港の24時間利用可能という強みを活かす機会であり、乗客ファーストの観点から、今後同様に事案が発生した場合に、北九州空港で受け入れることができるよう、交通事業者等関係機関のネットワーク体制構築を、スピード感を持って取り組みました。具体的には、深夜帯に到着した乗客の移動手段等の確保を目的に行政機関、航空会社及び交通事業者等をメンバーとした検討会議を、同年4月に県と共同で開催し、ダイバートが想定される際に、幅広く移動手段等を確保するため、協力事業者名簿への登録を依頼しました。協力事業者名簿への登録は、125社となっています。同年6月11日と15日、福岡行の航空便が北九州空港へ代替着陸することとなった際には、協力事業者名簿により手配したバスで福岡市内へ送り届けることなどができました。また、年末年始の北海道の大雪や羽田の航空機衝突事故に伴う臨時便対応も行っています。引き続き、24時間利用可能という北九州空港のポテンシャルを活かし、福岡空港との連携・相互補完を強め、利便性の高い空港として更なる利用促進につなげてまいります。

入社20年目

 複数空港による空港間連携の必要性はずっと昔から言われてきた課題ですが、これは私が入社20年目の、まだMRJが開発途中の時代に提案した内容です。
 機体のサイズについては、団体観光客の受入れを中心に考えるのであれば、インバウンド旅行者の属性や地域も含めて再検討が必要だとは思いますが、当時はリージョナルジェット10機を、九州内各県が共同してリースし、就航する東アジア諸都市を分担し、九州内の周遊と鉄道・バス等他の交通モードも含めた連携が考えられないだろうかという案です。
 今、OEMと言いますか、ボーイングしかり、エアバスしかり、サプライチェーンが乱れる等で、エアラインに機材がデリバリーできておらず、コロナ後の急速なインバウンド需要回復に十分に回せる機材がない状態です。なかでもLCCとくに外航の新興企業などでは、企業の与信という意味でも、そもそものビジネスモデルとの親和性という意味でも、機材需給がひっ迫している時期に、人気機種を自前で資産として購入することは少ないはずです。逆に見れば、LCCビジネスを、このアフターコロナの環境下で拡大したい、あるいは始めたいと考えている事業者にとって、良い条件でのリース機材の調達を望んでいらっしゃるのではないか。そのようなエアラインに対し、行政がリースの契約条件にプラスになるような支援ができないだろうかと考えております。 

 行政が支援したリース機材なので、自地域の空港で必ず定期運航するという約束ができれば幸いです。

変えたい「囚人のジレンマ」

 ちょうど去年の今頃、参与就任直後でしたが、朝日新聞さんから「空港間連携についての思いを話してください」と言われ、「昔から言っていることですが」と前置きし、「囚人のジレンマ」の話をしました。 

 関西空港調査会さん編著の先ほどご紹介した本でも触れさせて頂いたのですが、やはり予想通り新規就航の誘致交渉は、コロナ前に逆戻りしそうな見込みです。誘致交渉しているエアラインから、隣県の補助金について同県に確認できるはずもない誘致インセンティブについて、交渉の材料にされることがあります。私なぞは猜疑心が強いので、インセンティブの金額を競わされているような疑いを持ってしまいます。これが杞憂で済まされるよう、九州で言うと九経連のような第三者機関が、各空港のインセンティブの額を全部知っている状態にして、各県がエアラインを誘致する時にその第三者機関の人も同行してはどうかと。交渉の場で審判のようにイエローカードを出さなくとも、全てを知る人物が横に座っているだけで、不公平な情報の非対称性を少しは改善できるのではと考えます。これは、九経連さんで加藤先生とコロナ禍中にウェビナーに登壇させて頂いたときに、お話した資料です。空港施設や運用等で何かご相談があるときも、自県・自市だけで行くのではなく、経済団体にも情報共有し、一緒に行動できるようなサポートをしていただけると良いなと思い、是非九経連には社会資本部と言う部署がかつてありましたが、そういったオール九州のインフラとその運用に関する戦略的な窓口の復活を期待しています。

九州発着国際貨物の利用状況

 九州発着国際航空貨物の利用状況です。これは平成30年度に国土交通省が実施した動態調査から推計したもので、九州発着の国際航空貨物取扱量と利用空港を示したものです。 全体で約11万トンありますが、このうち九州内空港では約6万トンと55%の利用に留まっています。45%の約5万トンは九州域外に流出している状況です。我々はこれを、九州で唯一国際貨物定期便が就航する、北九州空港の潜在的な貨物量と捉えています。物流拠点化の取組みを通じて、九州の貨物は九州から輸送するモノの流れを構築していきたいと考えています。

物流フローから見る機能強化

 ではそれを担うために、我々は具体的にどのようなことに取り組んでいるのか。 

 まず空港の外では、物流ルートを構築します。フォワーダーの進出を支援したり、トラック費用の支援をしたりしています。
 貨物上屋では、国内外の貨物上屋の整備、通関体制の構築支援を行っています。エプロン側では、滑走路3,000m化、GSE車両の共有化、荷捌きスペースの確保、航空機側におけるスペースの確保などに取り組んでいます。

物流拠点化の考え方

 先ほど少し触れさせて頂いた本市の「物流拠点化構想」の、北九州空港に関する物流拠点化の考え方です。
 貨物便の就航を維持・拡大するために、「集貨」「創貨」「路線誘致」「機能強化」を行うことで貨物の増加につなげていくことを目指しています。「集貨」「創貨」「路線誘致」「機能強化」それぞれでやるべきこと、あるいは取り組んでいることは表中に記載しておりますので、ご参照ください。

貨物の取り組み

 具体的な取組について、取り上げてご説明します。
 物流ネットワークの構築については、九州・中四国で唯一の国際貨物定期便が就航しており、大韓航空が韓国の仁川を結び、仁川ハブを経由することで世界各都市への輸送ネットワークを構築しています。また、世界最大級のインテグレーターであるUPSが、令和5年2月から新たに就航し、関西国際空港を経由して、中国・深圳を結ぶ路線で、拡大するeコマースのニーズに対応したスピード輸送のサービスを提供しています。UPSの新しいサービスについては後述します。
 海上空港の特長を活かした輸送については、北九州空港の船舶が接岸できる岸壁を活用した、船舶と航空による複合輸送であるシー&エア輸送が可能です。令和3年11月には、フランスから人工衛星の輸入が実施され、今後もこうした特殊貨物を取り込んでいきたいと考えています。
 新たな物流ネットワークの構築については、令和6年4月から、ヤマトホールディングスが日本航空と共同による国内貨物定期便が就航しました。4便からスタートし、8月に6便、10月に8便となり、新千歳空港も加わり、徐々に拡大してきています。
 このように、国際・国内の貨物定期便を生かし、地域の輸送ニーズをしっかりと受け止めていきたいと考えています。

鹿児島から世界へ生鮮品等を翌日配達

 先ほど触れたUPSの話をここでさせていただきます。
 個人的には、鹿児島空港の将来ビジョンにも関わっているので、鹿児島県さんには誠に申し訳ないのですが、生鮮品、例えば鹿児島のかんぱち(魚)を、鹿児島空港から出すのではなく、鹿児島中央駅のJR九州のカウンターに持ち込むと、新幹線で貨物を輸送するサービス「はやっ!便」で博多まで運んでくださいます。そして博多から北九州空港までの横持ちはトラックで輸送し、北九州空港でUPSのフレイターに載せ海外へという出し方ができます。午前中のうちに中央駅のJRさんのカウンターで頼めれば、翌午前中にはシンガポールに着くというような速さです。現在のように、産地から福岡空港までトラック輸送し、旅客便のベリースペースを活用して運ぶより、2日も短縮できます。

電動固定翼機による2地点間飛行を実検証

 北九州市は、最先端技術を活用することで、北九州空港を拠点に新たなビジネスやサービスの創出を目指しています。ヤマトHDとの物流連携協定に基づき、環境に配慮しつつ経済と社会を発展させる「新しい運び方」をともに構築する取り組みを進めており、ヤマトさんと双日さんの、eCTOL(イーシートール)という電動固定翼機の実証実験への参加を決め、北九州空港と宮崎空港間で行うことになりました。
 本検証では、従来の輸送手段を電動航空機で代替した場合の経済合理性のシミュレーションや貨物を搭降載する際のオペレーションなどの運用面、充電設備といったインフラなどの技術面を検証し、今年、認証を取得します。
 このような実証の場にも積極的に使っていただくよう取り組んでいます。やはり物流の一番の問題は、環境問題と人の問題だと思っています。本検証で使用する「ALIA CTOL」は、ジェット燃料を使用せず電動で空港の滑走路を離着陸する航空機です。積載量560キログラム以上、航続距離約400キロメートル以上という性能を活かし、従来のトラックや船舶などの手段よりCO2を排出せず効率的な貨物輸送を実現する輸送方法として期待できます。

滑走路延長

 滑走路の延長、これが一番大事な話かもしれません。令和9年8月末に供与開始の予定で既に着工しております。 

 この3,000m化により、北米東海岸まで直行できるようになり九州だけでなく、西中国・四国の企業活動の国際的なサプライチェーン構築を、さらに制約なく推進できるようになります。
 スライドの下部に書かれた「貨物地区拡張」は、この滑走路延長に合わせる形で貨物拠点空港となるべきいろいろな整備物流機能を強化している部分です。次頁で詳しくお話します。

物流機能の強化

 「民間格納庫」とは、そもそもはMRJの試験飛行用につくられたハンガーだったところですが、リージョナルジェットの機重を前提にしたエプロンの舗装だったところを、今般90番スポットの北側(スライドでは左側)を、中型貨物機も駐機できる舗装に替えるための事業化を国に認めていただきました。
 「フォワーダー棟」という建物があります。国では貨物ターミナル地域を拡張し、当該地区に貨物ビルの整備を図ることとしており、公募により、令和6年5月に事業者が選定されたところです。手倉・通関作業を担うフォワーダーが進出することで、 貨物取扱サービスが向上することとなります。
 オレンジで示した「直線道路」は、先述の通りシー&エア輸送で、どんな長い貨物でも大型貨物機のエプロンから交差点を曲がらずに真っ直ぐ、一番下の直立護岸へ持って行って、船に載せることができるよう整備した道路です。
 こうした機能強化により、更なる貨物取扱量の増加、新規路線の誘致等につなげていきたいと考えています。

アクセス強化の取り組み

 アクセスについて宣伝してきてくださいと市役所で言われたので、ここでぜひ宣伝させてください。
 朽網(くさみ)は北九州空港に一番近いJRの駅です。今まで朽網駅には特急が止まりませんでした。特急が止まらないと何が不便かというと、大分や北九州市内でも、どちらかというと福岡寄りの方々が北九州空港を使うのに、小倉まで出て小倉からバスに乗らざるを得ないのです。バスはどうしても定員が限られていますし、バス一つだけとなるとリダンダンシー的にも良くないということもあります。
 折尾駅や黒崎駅など、特急が止まる北九州市内の駅があるのですが、そこから在来線特急で朽網駅まで行ってしまえば、朽網駅から17分で北九州空港に着くことができます。今般、朽網駅に上下合わせて10本の特急が停車することになったのですが、現在、大キャンペーン中です。「マイルート」というアプリを入れると、かなり割安です。皆さま是非ぜひご利用をお願いします。 

 特急停車に合わせ、西鉄バス北九州及びタクシー事業者と連携した取組みをしています。エアポートバス朽網線については、特急停車のダイヤに併せた時間帯を中心に27往復から40往復に増便しました。また、エアポートバス小倉線のノンストップ便についても17往復から21往復に増便しました。更に、特急停車で時間が短縮される折尾駅を中心に、約3㎞圏内において、利用者負担が500円の定額タクシーの取組を実施します。引き続き、更なる空港アクセスの強化に取り組んで参ります。

コンセッション(北九州空港の検討方針:北九州市)

 最後にコンセッションについてお話しいたします。 

 先ず市のスタンスですが、企業や国の状況を踏まえた本市の検討方針として、基本的にはコンセッションは検討すべき手段であると考えます。コンセッションは北九州空港の活性化推進に大きな可能性を持つ手段の一つであることから、今後も市議会、地元産業界、県・苅田町と情報交換し、将来、民間委託化に進むか否かを含めて検討するというスタンスです。
 空港コンセッションは、私の専門領域ですが、乗降客数200万人が、これまでの国管理空港のコンセッション同様の、独立採算型で公募しても応募主体が見込める最低ラインと言われています。北九州空港としても、空港を含めた地域活性化の手段の一つとして、コンセッションは前提にするとしていますが、現状、独立採算型ではない所謂「混合型」と呼ばれるスキームで、国管理空港が民間委託公募された事例は無く、既に資産査定調査を済ませた他空港等の動向を注視しているところです。そのような情勢を見ながら、少なくとも乗降客数200万人が右肩上がりの先に見通せるような状況に、一日も早く復活させることを優先しながら、国管理空港の混合型等の整理・適用を見極めたいと思っています。
 庁内の勉強会では、現在の基本施設の維持・管理を含め、エアサイドとランドサイドをまるっと一体で民間委託するスキームとは違った、多様な形の可能性も検討したいと思っています。と言うのも、北九州空港は今後活用できる用地が将来的にも増えていくわけです。実際に第3工区の70haは、もうほぼ土地としてでき上がっており、後は造成の機会を待つのみです。そうなると、このような余地を活用して空港島を産業用地にしろ、交流拠点にしろ、もう空港と空港ターミナルだけではない、幅広く空港島全体での開発に夢を描けるような民間の方々と、一緒に街づくりに携わってもらいたいと、個人的には思っており、そんなことを我々の中でも検討してみて、国に対してもご提案していきたいと考えているところです。ご清聴ありがとうございました。

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