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今月のセミナー

-関西空港調査会主催 定例会等における講演抄録-

コロナ前後のインバウンド動向と今後の展望
~関西×瀬戸内広域連携に向けて~

荒井 誠 氏

株式会社日本政策投資銀行 関西支店 企画調査課長

●と き 2024年3月5日(火)

●ところ 大阪キャッスルホテル6階 鳳凰・白鳥の間(オンライン併用)

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はじめに

 私どもは政府系の金融機関で、企業様へのご融資と投資がメイン業務です。一方で、お金だけではなくいろいろな情報を世の中に発信することにより、新しい動きのきっかけづくりもできればと考えています。関西地域では、まさにインバウンドが一つのキーワードになっており、また私どもはせとうちDMOの観光ファンドにも出資しておりますので、そういった観点でも関西と瀬戸内の連携を数年前からフォローさせていただいております。
 本日のテーマは「コロナ前後のインバウンド動向と今後の展望」です。本日用います資料は2023年4月にとりまとめたものです。コロナから開けた昨年ぐらいからインバウンドが戻りはじめ、まさにこれから回復していく中で、日本としていかにインバウンドを取り込んでいくか。特に地方は今後、人口減少が進むので、そういったところをどうインバウンドで補っていくかというのが一つのキーワードになってきます。
 本日は、コロナ前のインバウンド動向と、足元の最新データにアップデートできていない部分を口頭で補足させていただきながら、コロナ後のインバウンドのトレンドに関し、本日のキーワードである関西と瀬戸内の広域連携がどうして今求められているのか、ファクトを整理し、最後に今後の展望をお話しさせていただきます。
 スライドに目次を載せていますが、第1章は、コロナ前のインバウンドはどうだったのか。皆様すでにご案内のことと思いますが、改めておさらいを兼ねて。その後で足元のインバウンドの動向について、トレンドも含めて第2章で説明いたします。続いて関西×瀬戸内の広域連携が求められる背景について話します。関西ではオーバーツーリズムの問題もあるので、うまく西日本と連携しながら周遊を考えていく必要があるのではないか、といったところを第3章では話します。最後の第4章では、実際に広域連携をしていく上でどのようなことが必要なのかについてご説明いたします。

Before コロナのインバウンド市場の状況整理

【Beforeコロナのインバウンド市場】

<インバウンド訪日客数の推移と消費額>

 まずコロナ前のインバウンドの動向です。下のグラフは、コロナ前のインバウンド訪日客数の2013年から2019年までの推移です。国・地域ごとに色分けされていますが、特筆すべきは濃い赤から薄い赤の割合です。東アジアと書いていますが、韓国、中国、台湾、香港です。これらが全体の7割ぐらいを占めており、まさにこの4地域がコロナ前のインバウンドを引っ張ってきました。

 背景としてはビザ発給要件の緩和や2010年代前半の円安基調などがあります。また関空のアジア便の便数増加もあり、2019年には3,188万人と2013年の3倍になっています。下から二つ目が中国ですが、とりわけ中国が約7倍に膨らんでおり、増加が顕著でした。
 足元では2023年の速報値が出ています。こちらでは2,507万人なので、2019年比で大体8割ぐらいの回復になっています。一方で消費単価は、右下の小グラフにありますが15万円前後で、コロナ前の客数は増えていたけれども単価は上がっていませんでした。2023年を見ると21.8万円で、一部リベンジ消費的な側面があるかもしれませんが、足元の単価は伸びてきており、良い傾向になっています。

<インバウンド訪日客の入国ルートと都道府県の偏り>

 ではインバウンドがどこから入ってきたのかを、空港別で見ます。コロナ前の2019年では、羽田、成田、関空が全体の7割を占めていました。加えて新千歳から那覇を入れた主要7空港を合わせて見れば9割となり、地方空港にLCCが増えたものの、地方空港は全体の10%弱にとどまっています。

 下段に都道府県別のインバウンド訪問者数とその消費額のグラフがあり、青が首都圏、赤が関西で示されていますが、やはり青と赤が大半を占めています。インバウンドによる地方への恩恵は、コロナ前では限定的でした。

<インバウンド訪日客の訪日リピーター割合>

 それではインバウンドがどのような構成だったのかを訪日リピーターで見てみます。左側が韓国、台湾、香港、中国の東アジア4地域、右側はまとめて東南アジア、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアで、色がついているのがリピーターです。訪日回数が5回までをライトリピーター、6回以上がヘビーリピーターとしています。

 これを見ると、韓国、台湾、香港は大半がすでにリピーターになっていることが見てとれます。ある程度日本のメイン観光地は見てきたので、今度は地方へ行こうかな、という動きが見込まれます。
 対して右側のヨーロッパを見ると、グレー部分が6~7割程度なので、まだまだ来ていない層が多い状況です。ただ一方で、円グラフの訪日旅行日数を地域別で見ると、緑の欧米豪では1週間以上が7割以上を占めていることが分かります。初回で来た場合でも、2週間あるとゴールデンルートだけでは時間が余るので、地方を周遊するポテンシャルの高さが欧米豪では見てとれました。

【関西・瀬戸内のインバウンド市場】

<関西のインバウンド市場(訪問者・宿泊者)の特徴>

 地域別で見るとどうなっているのかを示したデータをご覧ください。左側が関西の2府4県における国・地域別のインバウンド訪問者(どこから来たのか)、右側がどこから来た人が宿泊しているのかを示しています。

 左のデータでは、大阪、京都、奈良が関西の大半を占めており、訪問者の国籍では中国が過半数を占めています。右の宿泊者では、奈良で宿泊者数が訪問者対比でがくっと少なくなっています。奈良は日帰りといいますか、奈良から京都、大阪に戻って宿泊する傾向があり、基本的には大阪、京都の2府が宿泊の受け皿になっています。
 特徴的なのは京都で、緑色の欧米豪からの宿泊者の比率が35%となっており、欧米豪の訪問者は京都に宿泊する指向が高いことが分かります。大阪は基本的にアジアからが多いというのが特徴的でした。

<瀬戸内のインバウンド市場(訪問者・宿泊者)の特徴>

 参考までに、瀬戸内のインバウンド状況をご覧ください。岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛という瀬戸内6県の訪問者数と宿泊者数です。一番多いのは広島です。原爆ドームや厳島神社といった世界遺産があるので、特に欧米豪の人気が高くなっています。

 ただ、人数でいうと約90万人で、関西の京都800万人、大阪2,100万人と比較すると10~20分の1なので、人数としてはそこまで多くありません。
 ほかにもいろいろと特徴があり、岡山、香川、愛媛でLCCが各空港を飛んでいるので、台湾、香港、韓国の比率が比較的高かったり、山口にも釜山-下関航路があるので、こちらも韓国が大半を占めているところが特徴として挙げられます。

<関西のインバウンド市場(宿泊施設)の特徴>

 続いて宿泊施設です。ホテル、宿泊者数を少しブレイクダウンして見てみます。左の円グラフが全国のインバウンドの宿泊者数で、地域別で見ると首都圏が35%、関西が27%となっており、関西が首都圏に次ぐ第2位の地位にありました。

 中央が宿泊者数で、黄色が大阪、水色が京都ですが毎年右肩上がりで、特に2019年にぐんと伸びています。これは2019年にかけて関空が東アジアの近距離国際便の発着回数をかなり増加させたとことと、ラグビーワールドカップがあったためです。それに伴い、少し鶏と卵的なところもあるのですが、ホテルの供給も関西で非常に多くなっていました。

<瀬戸内のインバウンド市場(宿泊施設)の特徴>

 参考に瀬戸内もご覧ください。瀬戸内はシェアでいくと2.4%なので、全国的にはまだまだ小さいシェアです。中央の宿泊者数のほうは右肩上がりに伸びており、特に広島、香川あたりが牽引していました。

 とはいえホテルが増えたのかというと、客室数はほとんど横ばいです。旅館が減ってビジネスホテルが増えていたのが2019年までの動きです。

【流動性分析】

<日本におけるインバウンド訪日客の入国港>

 次に空港に関して見てみます。日本におけるインバウンド訪日客で、どの国籍の方がどの空港から入ってきているかを示しました。これを色分けした円グラフで表しています。一番多いのが成田、次いで関空、羽田という順番です。

 面白いのが、右側の国・地域別の入国港割合というデータで、赤が関空で青が羽田と成田ですが、中国は全体の4割が関空から入り、韓国、台湾、香港、東南アジアも4分の1は関空から入って来ているという点です。関空が改めて東アジアのゲートウェイであることがここから見てとれます。
 一方でヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアはやはり羽田、成田中心で、関空はその次の位置付けになっています。

<関西空港入国者の流動(うち瀬戸内訪問者)>

 関空にブレイクダウンします。関空から入った訪日客がどこを周遊しているのかについて、国交省が公表している「FF-Data」というインバウンドの流動データ(推計値)に基づいて分析を行っています。

 エリアは中国、韓国・台湾・香港、東南アジア、欧米豪の4カテゴリーで分けています。まず中国を見ると、関空からの入国が約340万人で、うち6割は関西のみの訪問となっています。残り4割は他の地域を訪問するのですが、そのうち大半が首都圏に抜けるというゴールデンルートに行っていることが見てとれます。
 一方で右側の韓国・台湾・香港では、関空からの入国者が約320万人いて、大半が関西を見て帰るのであまり周遊していません。周遊する人が約10%おり、そのうちの3分の1ぐらいが瀬戸内に行っています。
 欧米豪は、関空からの入国者が約60万人で、韓国や台湾と比べると5分の1ぐらいですが、半分以上が他の地域を回っています。そのうち3割ぐらいが瀬戸内を訪問しています。人数で見ると、韓国・台湾・香港と欧米豪で関西から瀬戸内に行く人は大体同じぐらいの数であることが確認できています。

<瀬戸内訪問者の入国港>

 瀬戸内に来る人たちがどこから入っているのかを示したのが次の図表です。それぞれの空港から入った人がどれだけいるのか。各国名・地域名があり、例えば韓国の列を見ると、韓国から日本に19.4万人来ており、そのうち1.2万人が関空から、7.2万人が瀬戸内4空港(岡山、広島、松山、高松)から入っていることが分かります。

 東アジアは瀬戸内4空港から入っている人が一番多いです。こちらの各空港とも、LCCは東アジアから飛んでいるのでそれが一番多く、次いで関空が多くなっています。欧米豪については、基本的にダイレクトのフライトは瀬戸内に飛んでいないので、メインは東京2空港、その次が関空です。アジアと欧米豪で入国経路が違うことは改めてこちらから確認できます。
 以上がコロナ前の動向です。次章でコロナ後のインバウンド市場はどうなっていくのかについて、トレンドを簡単に説明できればと思います。

Afterコロナのインバウンド市場の動向

【DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査】

<海外旅行の予定・検討状況>

 当行本店の地域調査部と公益財団法人日本交通公社(JTBF)は毎年、インバウンドのアンケート調査を実施しております。その2023年度版を抜粋したものです。

 アンケートは約7,000人を対象に取っております。左側、今後1年間に海外旅行に行くかどうかをまず聞いてみると、アジアが8割、欧米豪で7割ぐらいだったので、皆様の海外旅行の意向はかなり高いようです。
 そして右側、実際に海外旅行に行こうと思っている人に、予算と滞在日数はコロナ前と比較してどうかと問うたもの。これに対しては、予算も増え、滞在日数も長くなるという回答でした。特にアジアの方が予算増・滞在日数増の傾向が少し強いことが見てとれます。

<次に海外旅行したい国・地域>

 続いて、アンケート調査の中で、次に海外旅行したい国・地域はどこかと聞いています。日本が1位でした。日本の会社がアンケートをとっているので、日本にある程度の関心がある方も多いということで特に高いランキングになっている部分もあるでしょうが、毎年1位を継続していることも確認できています。

 これを地域別に見てみると、アジアの中では日本が圧倒的で、2位の韓国に約20ポイントの差をつけています。2019年度からの推移を現した右側の折れ線グラフでは、基本的には1位の水準を維持しています。

 欧米豪も見ていきます。今回日本はトップなのですが、実は右側のグラフでは昨年度(2022年度)はアメリカに次いで2位でした。

 昨年2位だった背景を説明します。まず昨年度のアンケートは2022年の夏に実施しましたが、その時点で日本はまだコロナからオープンしていませんでした。アメリカは反対にもう観光客を受け入れていたので、一番多くに受け入れられていた国という点でアメリカの人気が高くなっていました。そして今年度、つまり昨夏のアンケートでは日本ももうオープンだったので、日本が1位に戻ったのが特徴となっています。

<地方訪問意向>

 もう一つ興味深い話題があります。こちらは件のアンケート対象の中で「日本に来たことがある」と回答した人を対象に、地方へ行きたいと思うかどうかを聞いたものです。アジア、欧米豪共に9割前後で、地方の訪問意欲はどの国も高いことが確認できます。

 その下のグラフは、実際に地方を訪問したいと言った人を収入で3層に分けたものです。高収入層がより地方に行きたい意欲を示しており、特に欧米豪で高い傾向が見てとれました。したがって、今後地方で一定の消費行動も期待できるのではないでしょうか。

【ポストコロナ時代の訪日観光ツアーの傾向】

 こちらもアンケート調査です。2023年1月~2月に行った調査なので、足元はまた少し変わっている部分はあるのですが、海外の旅行会社が扱っている訪日観光ツアーを見て、その地域や行程について、アジア市場向け、および欧米豪市場向けの特徴を分析したものです <主にアジア市場向けツアー会社> まずアジア市場向けのツアーで、地域別に色分けしています。青が関東、赤が関西、オレンジが中四国です。基本的にアジア向けのツアーは1週間ぐらいのプランになっています。

  この表を見ると、東京や大阪はもちろんあるのですが、やはりアジアの訪日客にはリピーターもそれなりにいるので、東京も大阪も通らないツアー(27番以降)、例えば四国だけ、あるいは北海道だけ、東北だけ、中部だけ、九州だけ、といったものが結構出てきていることが分かります。
 もちろんLCCが昨年の冬時点では戻っていなかった部分もありますが、おそらくLCCが戻るだろうという前提で組まれているツアーが多かったようです。あとは関東や関西のツアーも、単純に関西、関東だけではなく、近隣の中四国や東海地域を組み合わせるケースが多くなっていることも特徴ではないでしょうか。

<主に欧米豪市場向けのツアー会社>

 一方、欧米豪市場向けの特徴は期間が長いという点です。先ほどのアジアでは1週間でしたが、欧米豪は2週間を超えます。基本的に出発地は東京か関西、一部福岡や軽井沢などがありますが、最初に羽田に着いてからの福岡、というルートだと思います。欧米便が羽田、成田、関空にしかないからです。

 2週間あるので、単純に東京、大阪だけではなく東海地域、北陸地域、瀬戸内地域など広域で周遊していくツアーになっています。東京から北海道を混ぜるツアーもあれば九州に移るツアーもあり、差別化を図っていろいろなプランの周遊が組まれています。やはり欧米豪の旅行者の価値観は多様化していることがこちらから推察できます。
 関西発は33番~36番がメインですが、関西を回った後に瀬戸内、そして九州へ行って戻ってくるコースです。瀬戸内はコンビネーションされているので、関西と瀬戸内はセットで考えるのが一般的だということが見てとれます。

【Afterコロナにおける日本の観光目標】

<新たな観光立国推進基本計画>

 足元の政策動向を紹介します。2023年3月に閣議決定された「観光立国推進基本計画」は3カ年の計画で、まさに来年の万博に向けて観光をしっかり推進してきましょうという方向性を示したものです。
 ポイントは量より質を重視していることです。コロナ前はいかにインバウンドの数を呼んでくるかに重きを置いていましたが、今は量ではなく質です。単価をしっかり引き上げる、日数を伸ばすといったところに重きを置きました。右下の「インバウンド回復戦略」で、単価を20万円超えにするとありますが、実際はもう超えてしまったのでさらに目標を高く目指していくことになってくると思います。他には地方に泊まる日数を増やす、旅行者数をコロナ前まで戻すなど、量から質への変換が見てとれます。
 また来年度の予算を見ると、インバウンド予算はかなり拡大しているので引き続き国も政策として注力していくようです。
 以上がトレンドです。このようなトレンドを踏まえて今後関西と瀬戸内で広域連携していく必要があると思います。そこで次の第3章では、いくつかの事例やデータを交えながら背景をご紹介いたします。

関西×瀬戸内広域連携が求められる背景

【関西・瀬戸内の観光コンテンツの分析】

<旅行口コミサイトの観光コンテンツの分析(概要)>

 こちらは、世界最大の旅行プラットフォーム「トリップアドバイザー」に掲載されている日本の観光コンテンツについて分析したものです。

 こちらも2023年1月~2月に調査したもので、関西、中国カテゴリー分けして分析しました。関西はコンテンツが多いので上位50、中国、四国は上位30とし、カテゴリーは我々の方で自然、歴史・文化、美術館・博物館、観光施設・エンタメの4つに分けています。
 まず左の関西ですが、歴史・文化が最多です。伏見稲荷、東大寺、姫路城などが上位です。次点が観光施設・エンタメで、道頓堀とかUSJといった所が入ってきます。
 中国地方でもちろん歴史・文化は多いのですが、関西にないものでは、やはり美術館・博物館カテゴリーの平和記念公園や平和関連の展示などが入っています。そして自然が関西よりも多くなっています。
 四国については自然が一番多く、次に美術館・博物館で、これは直島のアートなどが入っています。こう見ると、関西と中四国は競争・競合というよりは補完関係にあると言えるでしょう。
 関西は便宜上、2府4県を一くくりにしていますが、関西の中でも京都・大阪エリアとそれ以外の例えば京都・兵庫の日本海側や紀伊半島などはまた違った特徴があるので、このようなエリアの組み合わせの中で魅力的な旅行が提示できるのは関西およびその周辺の強みだと思います。

<旅行口コミサイトの観光コンテンツの分析(関西)>

 具体的なランキングを見てみましょう。まず関西のランキングで、上位50位を示しました。観光地、それが所属する府県、カテゴリー、そして一番右側は外国語の口コミの比率を表しており、赤が濃いほど比率が高くなり、緑になると低くなります。

 関西は結構赤が多く、一番外国語の口コミ比率が高いのは28位の京都侍忍者ミュージアムという、むしろ日本人があまり知らない所なのですが、海外の方々が文化を体験したいと訪問して人気が高くなっています。
 それ以外の上位は伏見稲荷大社、金閣寺、清水寺、東大寺辺りで7割以上の高い比率になっています。31位以降は大原の三千院から京都の竹林の道などが入っています。

<旅行口コミサイトの観光コンテンツの分析(中国)>

 中国はどうでしょうか。こちらの右列を見ると、関西に比べて緑や黄色が多いことが分かります。

 中国地方で圧倒的に口コミ比率が高いのは広島です。欧米の方には原爆ドーム、平和記念公園、宮島辺りの人気が非常に高いため、口コミ比率も高くなっています。それ以外の観光地、例えば6位の出雲大社や7位の倉敷美観地区は日本人にとってはかなり有名ですが、インバウンドの口コミでは4割、1割となっており、まだまだ海外の方には知られていません。
 そのようなまだ知られていない場所を、どうインバウンドの方々にアピールしていくかが今後の課題であり、同時にポテンシャルとも言えると思います。

<旅行口コミサイトの観光コンテンツの分析(四国)>

 四国はより緑色が増えています。四国で圧倒的に高いのは直島などの瀬戸内アート関連で、ベネッセミュージアムや地中美術館で7割ぐらいあります。それ以外の場所では、香川県高松市の栗林公園が5割弱で、他は2割、3割程度なので、関西と連携してアピールすることによって、より知名度向上が期待できるのではないかと思います。

【関西・瀬戸内の宿泊施設の分析】

 宿泊施設の特徴も簡単に、数字ではなく定性的な情報にはなりますが見ていきます。

 滞在してもらうためには宿が必要です。皆様もニュースなどでご覧になっていると思いますが、大阪や京都ではラグジュアリーホテルの新設が増加しています。大阪では今年、グラングリーン大阪にもホテルが建ちます。資料左側のグラフからも分かるように、10万円以上の客室が京都、大阪にはかなり多数あります。
 一方で瀬戸内については、具体的な定量情報はないのですが、最近開業した宿泊施設を記載しています。シティホテル系では広島のヒルトンなど。高松では今度駅前にラグジュアリーホテルができるのですが、それ以外は比較的古民家の宿が多く、そこが特徴的かと思います。
 右側に関西と瀬戸内の強みをマトリックスで示しています。こちらを見ても、競合というよりは共存しうるのかなと感じます。例えば関西のときにはウエスタン系のホテル、中四国、瀬戸内のときには和風のホテルに泊まってもらい、ハードだけではなくソフト面でもいろいろな体験型のコンテンツや地域に根ざした食を提供することによって、インバウンドからの人気の高まりが期待できるのではないでしょうか。
 欧米の方々はずっと旅館だと疲れるので、ベッドのある宿にも泊まりたいという話も聞きます。したがってある程度はホテルにも泊まりつつ、和風旅館を一部入れるプランが考えられると思います。

【各地域の特徴的なコンテンツ】

<関西地域:考古学観光〜遺跡を巡り、そのストーリーを深く理解する旅行~>

 ここからは、具体的に関西や瀬戸内での取り組みを紹介します。関西の一つの可能性、「考古学観光」。英語ではArchaeological tourismと言い、文化観光の一種です。単純に見るだけではなく、遺跡の背景にあるストーリーへの理解を深めて文化的・歴史的教養を得ようとするという点に特徴があります。
 ポイントは、単なる観光ではなく遺跡保全の機運を高められることに加えて、旅行者がお金を落とすことで遺跡が維持できるという点でサステナブルな観光だとされていることです。日本ではまだまだこのような観光客が少ないのですが、世界的に見るとエジプトのピラミッドはじめ多くの事例があります。
 ポテンシャルとしては奈良県明日香村の高松塚古墳や石舞台古墳があります。世界遺産登録を目指しており、このような世界遺産登録の流れも生かしながら考古学観光の考えも取り入れていくと、インバウンドの取り組みにもつながるのではないかと思っています。

<山陽地域:ユニークな宿泊施設~その土地ならではの宿泊体験~>

 広島と山口の和風の宿泊施設の事例です。上が広島の尾道にある生口島の旅館です。生口島とはしまなみ海道の一角にあるレモンの島として有名な島です。この高級宿泊施設はアマンの創業者であるエイドリアン・ゼッカ氏が手がけた古民家ホテル「Azumi Setoda」で、1泊1人5万円以上と非常にラグジュアリーです。まさに富裕層ターゲットの高級旅館といえます。
 山口の長門にある「界 長門」は星野リゾートが手掛けた旅館で、山口最古の歴史を有する長門湯元温泉で温泉街の再生活動と連携しています。特徴的な取り組みなのでご紹介させていただきました。

<山陽地域:サステナブルツーリズム~ストーリー性の高いサステナブルな体験価値の提供~>

 岡山北部、米子近くの真庭市では、2021年に建築家の隈研吾氏による木の建築物を移設した「GREENable HIRUZEN(グリーナブルヒルゼン)」がオープンしました。瀬戸内もそうでしたが、このようなアートエッセンスも入れながら地域の活性化につなげていく動きも出てきています。真庭市は林業が盛んなエリアなので、そのような地域産業との連携もストーリーとして発信できるのではないかと考えています。

<四国地域:アドベンチャーツーリズム~四国にある“手つかずの自然”を活かして~>

 最後は四国のアドベンチャーツーリズムです。皆様も最近耳にされたことがあると思いますが、海外でアドベンチャーツーリズムは市場として確立されています。ただアドベンチャーというと、どうしても激しい運動のイメージを持たれると思うのですが、実は定義としては「自然」「アクティビティ」「文化」の3要素のうちの二つ以上で構成されている旅行を指します。必ずしもアクティビティが必須というわけではありません。
 四国遍路はまさに、住民と触れ合い、地域を守り、歩いていく中で自己実現を図り、自分を見つめ直すという点で、アドベンチャーツーリズムに親和性のあるエリアとして紹介しました。

【関西×瀬戸内のポテンシャル】

 いくつか事例をご紹介させていただいた上で、改めて関西と瀬戸内の特徴を記載しています。

 京都は世界有数の観光地、大阪も世界有数の都市型観光地で、関西には京都、大阪以外にも奈良、姫路、紀伊半島などいろいろなコンテンツがあります。
 瀬戸内に目を転じてみると、山陽側は瀬戸内の風光明媚な景色、二つの世界遺産を擁する広島、古民家改修の高級宿もあります。四国側は直島を中心としたアートや四国遍路のアドベンチャーツーリズム。最近では四国や瀬戸内は海外のメディアでも取り上げられています。
 関西と瀬戸内は直線距離でいくとそれほど離れてなく、これだけ多様な観光資源が近接しているエリアは世界でも稀有な事例ではないかと考えています。実際の直線距離は、大阪から見ると300キロ圏内で広島や松山に届きます。広島は新幹線に乗れば1時間半を切り、松山は鉄道で行くと少し遠いのですが、飛行機なら約50分なので実は結構近いのです。

 右側の図は、関西×主要観光地の距離と、世界の大都市×有名観光地の直線距離を整理したものです。例えばバンコクからプーケットまでは700キロぐらい離れていますが、大阪からしまなみ海道までは200キロぐらいしか離れていません。パリからコートダジュールまでは700キロ、シドニーからエアーズロックは2,000キロあります。しかし大阪から瀬戸内は400キロ以内に収まっているので、やはり近くにあるといえます。
 しかし一方でご案内の通り、2次交通も含めた周遊性はまだ改善の余地があるので、その部分の向上は必要にはなりますが、距離的に近いことによって連携のポテンシャルは非常に高くなるのではないかと考えています。

【関西と瀬戸内が連携する意義】

<両地域の現状を踏まえた広域連携により発揮できる強みと可能性>

 関西はアジアから非常に人気のエリアですが、欧米豪にとっては東京に次いで2番目の目的地になっています。足元はかなりリピーターが増えてきているので、リピーターの関西への訪問希望率が少し下落する傾向もあります。
 また、現状はかなりオーバーツーリズムになっています。このまま京都、大阪がオーバーツーリズムのままでいくと、日経のインバウンドの連載記事でも言及されていましたが、外国人の方々も「混雑しているのならやめよう」といった傾向になってくるので、他の西日本の地域に流していくことが関西として求められるのではないでしょうか。
 瀬戸内は欧米豪の比率が高いのが特徴で、多様なコンテンツを有しますが、知名度は関西に比べてまだ低いという現状があります。
 この現状を踏まえて考えると、いろいろなコンテンツがありますが、やはり関西と瀬戸内は競合というよりは相互補完的な魅力を持つエリアなので、そういった意味では広域連携することによってwin-winになるのではないでしょうか。
 関西のメリットは何でしょうか。リピーターも増えていることを考えると、関西の近くに瀬戸内があるところをセットで価値訴求することによってまた新たな層が関西を訪れてくれる可能性があり、オーバーツーリズムの解消にもつながってきます。
 瀬戸内は、関西のマーケットが少しでも周遊させることができれば、地域にとって一定の経済効果が見込まれるので、関西との連携が非常に重要になってきます。
 来年(2025年)、大阪・関西万博と瀬戸内国際芸術祭が同時に開催されるので、両地域の広域周遊の追い風になります。こうしたイベントも控えているので、しっかり広域連携を図っていく必要があると考えています。

<参考:広域周遊活性化により得られる瀬戸内地域の消費増加効果の試算>

 先ほども紹介した国交省の「FF-Data」と観光庁の「訪日外国人消費動向調査」を使用して、簡易的な試算を行いました。

 まず関空から入って関西しか周遊しない訪日の滞在日数と、瀬戸内も回る人の滞在日数の差分を出します。その差分に、今関西しか回っていない人が仮に瀬戸内も往訪したら何日日数が増え、その時の1人当たりの消費単価を足すとどうなるかという試算です。
 そのうちの1割ぐらいは確保できるだろうとして、ざっくり計算すると約200億円になりました。瀬戸内6県のインバウンド消費額の4割に相当するので、瀬戸内の消費増加効果は大いにあるのではないかと感じました。

関西×瀬戸内 新たなゴールデンルートの実現に向けて

【両地域の広域周遊推進のターゲット層】

 どんなターゲットが良いのか必ずしも正解はありませんが、「量から質へ」という流れがあるので、単純に量を呼ぶよりは、日本の文化や自然に興味を持ち、それらに対価を払ってくれる旅行者を確実に引っ張ってくる必要があると考えています。そのような層はアジア、欧米豪の両方にいると思います。
 初回来る人にそういう意識がないわけではありませんが、やはりリピーターがターゲットになってくるのかなと思います。その中で確実にお金を落とすとなると、ある程度富裕層になるので、そうするとアジアのターゲットは200万人前後です。欧米豪はリピーターの有無にかかわらずしっかり周遊するので、そのうちの半分ぐらいは富裕層であろうことを考慮すると、こちらも200万人前後というところなので、同じぐらいのマーケットがあると推測しています。
 では、そういった層に対して具体的に何をしていけばよいのか? という部分を次にまとめました。

【新ゴールデンルートの実現に向けて必要となる主な対応】

 まず広域周遊の課題です。これは地域の課題と広域の課題、二つに分かれています。

 地域の課題は、そもそも「商品」が少ないことです。一つは自分たちの地域の強みを商品にできていない。もう一つは、商品はあるがそれを上手く伝えられていない。この二つの課題があると思います。
 広域の課題は、連携すると言いながらも実際はなかなか横連携が進んでいないことです。広域周遊の歯車を回すためは、地域のコンテンツを磨き上げ、それを伝えていくために、しっかりとした連携の体制をつくっていくことがポイントになると考えています。
 一つ目は観光コンテンツの磨き上げ、二つ目は伝える枠組みをつくるためのガイドの人材育成、三つ目はプロモーション体制の整備。四つ目の広域については、インバウンドが何を求めているのかという目線で広域周遊をしっかりできるような体制を整えていく必要があると、このような4点を我々の提言として整理させていただいております。

<提言①:地域のDMO等を中心とした観光コンテンツの磨き上げ>

 一つ目が観光コンテンツの磨き上げです。先ほどからコンテンツはいろいろあるという話はしていますが、実際インバウンド誘致をしていくために、インバウンドの方々にも知ってもらわなければいけません。そのためにインバウンドの方にも訴えかけられるような商品・魅力が必要です。
 そういった意味で、地域のDMOや観光事業者と連携して取り組んでいくことが求められると思います。一方で、地域の人だけでは人材ノウハウに限りがあるため、地域外の人材を活用することも大事でしょう。例えば副業のような形で地域の戦略づくりを手伝ってもらう。そうすることによって新しい切り口が得られ、そこから観光産業が発展していけば、副業人材の転職も見込まれ、地域活性化の好循環につながることも考えられます。

 こちらは能登の事例です。今年1月の能登地震で被災された方々にお見舞い申し上げますとともに、いち早い回復をお祈りしております。能登DMCでは、まさに能登の良さをアピールして、インバウンドを引っ張ってこようという取り組みが進んでいます。

 実は能登へは、金沢から行くより東京から行くほうが近く、飛行機で東京から1時間、金沢から車で2時間です。なので羽田から誘客するような取り組みをされています。特徴としては、先ほど副業について触れましたが、活動されているメンバーがみんな副業者だという点です。このような中、新しい視点でいろいろな観光コンテンツ開発をされているという事例です。
 もう一つは「海の京都DMO」という事例で、京都北部の取り組みです。こちら地域連携をしながらプロモーションを行っており、アジアと欧米豪、ターゲットに合わせたプロモーション戦略をとっています。

 右下の「宿泊施設」のところ書いておりますが、オーバーツーリズムが生まれないように送客をコントロールしながら旅行者の満足を高める取り組みもされています。

<提言②:観光ガイド人材の育成>

 二つ目が観光ガイドの人材育成です。インバウンドの方々に地域を知ってもらうには、単に一つひとつを説明するのではなく、ストーリーも含めて深く理解してもらう必要があります。特に欧米豪の人はそのようなものを求めるので、それにふさわしいガイド人材が必要です。

 しかし、実際にガイドがいるかというと、まだ日本にはそのようなインバウンド対応のガイドが少ないので、今後人材を育成していく必要があります。地元の方はもちろん、それ以外にもその地域のファンで、地域の魅力を伝えたいという情熱を持った地域外人材も積極的に受け入れていく必要があると思っています。
 またガイドだけではなく、地域のDMOと観光事業者が直接雇用することで、地域の中核観光人材育成にもつなげられる可能性もあるのではないでしょうか。

<提言③:DMOを中心としたプロモーション体制の整備>

 三つ目がプロモーション体制の整備です。DMOは非常に多くの地域にあり、市町村単位のDMOもあれば広域連携DMOもありますが、それぞれが別々のことをしていたら連携にはなりません。地域のDMOと広域連携DMOにはそれぞれに強みがあります。

 地域のDMOはその地域のことに非常に詳しいので、コンテンツの磨き上げが可能で、地域のタイムリーな情報も持っています。広域連携のDMOは、広域地域のいろいろなネタを持っているので、それらをつなげて発信をしていくことが求められています。したがって、うまく役割分担しながらブランド力を高め、発信していく必要性が出てくるのではないかと思います。
 実際に、2023年5月に関西観光本部、瀬戸内DMO、四国ツーリズム創造機構、山陰インバウンド機構という四つの広域連携DMOが、これから4地域でさらに連携して取り組むべく連携協定を結ばれました。そのような動きも踏まえながら今後広域連携が推進されていけばと思います。

<提言④:「インバウンド目線」に立ち広域周遊をシームレスで実行できる体制の構築>

 逆に我々が海外旅行をするときのことを考えてもらえばと思うのですが、海外へ行った際、「何々県」や「何々市」を意識するかというと、必ずしも意識するわけではなく、「どことどこに行きたい」と考えてプランをつくると思います。なのでアメリカ人からすれば「香川県だけ回りたい」「広島県だけ回りたい」というよりは、「宮島にも行きたい、直島にも行きたい、道頓堀にも行きたい」というのが実際のところなので、基本的に行政区分と行きたいところが一致することはないと思います。
 したがって、インバウンド訪日客の満足度を上げるという意味では、他の地域は仲間として、協力してマーケットを拡大していく認識が重要だと思っています。

 情報発信でも、瀬戸内は足元で少し注目度が上がりつつあるものの、大阪や京都に比べるとまだ知名度が低いのが現状です。そうなると例えば関西とセットで、あるいは来年の万博とセットでしっかり情報発信をしていくことが今後も求められてくるのではないでしょうか。関西を希望する人にとっても、「関西の近くにこんな資源もあるのか」と、新しい価値提供につながるはずです。
 周遊性の向上という観点で考えると、関西MaaSの動きなど、プラットフォームづくりも大事です。また、個人旅行者はそれぞれバスやフェリーのホームページを見ながら目的地を確認していますが、そこに観光地の名前を載せるなども有効でしょう。あとは近隣の空港だけではなく、関空からアクセスされる方結構もいるので、関空からどう行けるのかも示していくといったところも、今後求められるのではないかと考えています。大阪観光局が取り組んでいる広域周遊活性化も参考になるかと思います。

おわりに

 まさにコロナ後というところですが、インバウンド訪日客のニーズは非常に多様化しています。基本的には「どんなものを見たいか」という視点での来日なので、多様なニーズを一つの地域で全部対応するのは現実的ではなく、自分たちの地域にない魅力は他の地域で補うべきでしょう。こうして、より広い視点でインバウンドの満足度が上がるルートをみんなでつくっていこうという動きが求められるのではないでしょうか。
 コロナ前は、いかに大阪や京都に集めるかに注力されていましたが、今後はうまく分散周遊することで、人気のあった地域はオーバーツーリズムの解消にもつながりますし、これまで人があまり来なかった地域には適正な人数をしっかり送客することで、サステナブルな地域づくりにもつながります。
 これからまたインバウンド訪日客が増えてきますが、しっかりターゲットを絞り、地域にお金を落としてもらえるような形で日本のインバウンド観光が盛り上がればと期待しております。 私の説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

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