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航空空港研究レポート

-学識者による研究レポート-

日本発ソウル経由の乗継旅客に関する考察 -関西国際空港を中心に-

堂前 光司 氏

関西外国語大学 外国語学部

1 はじめに

 これまで、韓国系航空会社は日本路線を強化し、積極的な路線展開を推進してきた。現在、東京や大阪、名古屋、札幌、福岡、那覇をはじめ、多くの地方都市を含む28都市(29空港)がソウルと定期便によって結ばれた結果、日本の空港を出発する国際航空旅客の一定割合が、仁川国際空港(仁川)や金浦国際空港(金浦)経由で、第3国に出国している(杉谷・丹生(2010))。国際輸送に関する商業航空権の観点からは、これは韓国系航空会社による「第6の自由」と捉えることができ、国際航空市場におけるハブ・アンド・スポークシステム(Hub-and-spoke System:HASS)の一例であるといえる。
 本研究レポートでは、OAGデータに基づき、特に、関西に着目しながら、日本を出発しソウルを経由する乗継旅客の流動実態を明らかにする。

2 日本とソウル間における航空路線の概要

 表1は、2019年における日本とソウル間の航空路線について、出発空港別および航空会社別に、便数と座席数を整理したものである。
 まず、表1(1)からは、日本の28都市(29空港)がソウル(仁川、金浦)と定期便で結ばれていることが分かる。次に、便数および座席数ともに、関西国際空港(関西)が最も多く(便数:10.5千便、座席数:215.9万座席)、続いて、成田国際空港(成田)は便数が7.5千便、座席数が165.4万座席、東京国際空港(羽田)は便数が5.5千便(仁川:1.1千便、金浦:4.4千便)、座席数が139.4万座席(仁川:19.7万座席、金浦:119.7万座席)、そして福岡空港(福岡)は便数が6.4千便、座席数が132.6万座席となっていることが観察される。航空会社に関しては、関西、羽田、新千歳空港(新千歳)、および那覇空港(那覇)以外の25空港は、成田や福岡も含めて、韓国系航空会社のみが就航している。
 次に、表1(2)からは、便数および座席数ともに、上位7位までを韓国系航空会社が独占しており、特に、大韓航空(便数:8.6千便、座席数:204.9万座席)、アシアナ航空(便数:7.7千便、座席数:179.0万座席)、そしてチェジュ航空(便数:6.4千便、座席数:121.2万座席)が多い。次いで、ジンエアー(便数:4.3千便、座席数:89.5万座席)、ティーウェイ航空(便数:4.6千便、座席数:85.4万座席)、イースター航空(便数:3.6千便、座席数:68.9万座席)、そしてエアソウル(便数:2.9千便、座席数:56.0万座席)と続いており、上位3位から7位までを、韓国系LCCが占めていることが特徴的である。そして、Peach Aviation(便数:2.3千便、座席数:42.1万座席)、日本航空(便数:1.1千便、座席数:28.4万座席)、および全日本空輸(便数:1.1千便、座席数:27.4万座席)となっており、日本の航空会社ではPeach Aviationが最も多い。

3 日本発ソウル経由乗継旅客の実態

 表2は、2019年における日本発ソウル経由の乗継旅客について、乗継旅客数とその総旅客数に占める割合、そして乗継旅客数の多い上位30目的空港について、乗継旅客数とその総乗継旅客数に占める割合を示したものである1)
 まず、表2(1)からは、乗継旅客数については、成田(19.6万人)、関西(17.4万人)、および福岡(13万人)が10万人を上回っており、次いで、羽田が8.3万人(仁川経由:3.8万人、金浦経由:4.5万人)、中部国際空港(中部)が7.8万人、そして新千歳が6.1万人となっていることが分かる。羽田に関しては、仁川経由よりも金浦経由の方が、乗継旅客数は多いことが特徴的である。それ以外でも、那覇や仙台空港(仙台)、岡山空港(岡山)の乗継旅客数は1万人を上回っており、多くの地方空港から仁川経由で、第3国に出国していることが観察される。乗継割合に着目すると、新潟空港(新潟)が31.8%、青森空港(青森)が28.6%、仙台が25.8%、岡山が20.6%、小松空港(小松)が19.8%、そして旭川空港(旭川)が18.6%となっており、地方空港の方が相対的に高い割合を占めている。都市圏の空港に関しても、全て10%を上回っており(中部:17.2%、成田:16.0%、新千歳:12.8%、福岡:12.7%、関西:10.2%)、羽田ついては、仁川経由の乗継割合が23.9%、金浦経由の乗継割合が4.7%、そして合計では7.4%の乗継割合となっている。全体では、日本とソウル間の総旅客数(702.5万人)のうち、80.5万人がソウルで乗り継いでおり、その乗継割合は11.5%となっている。
 次に、表2(2)からは、乗継旅客数の多い上位30目的空港における乗継旅客数とその総乗継旅客数に占める割合に関しては、中国(青島流亭国際空港:3.3万人(4.1%)、北京首都国際空港:3.1万人(3.9%)、上海浦東国際空港:2.0万人(2.5%)、瀋陽桃仙国際空港:1.8万人(2.2%)、大連周水子国際空港:1.7万人(2.1%))や韓国(済州国際空港:2.3万人(2.9%)、金海国際空港:2.3万人(2.9%))の空港が上位を占めていることが分かる。それ以外でも、ヨーロッパ(ロンドン・ヒースロー空港:2.3万人(2.9%)、パリ=シャルル・ド・ゴール空港:1.9万人(2.4%)、フィウミチーノ空港:1.9万人(2.4%)、バルセロナ=エル・プラット空港:1.3万人(1.6%)、フランクフルト空港:1.2万人(1.5%))や北アメリカ(ロサンゼルス国際空港:2.1万人(2.7%)、ダニエル・K・イノウエ国際空港:2.1万人(2.6%)、サンフランシスコ国際空港:1.3万人(1.6%))、そしてアジア(タシュケント国際空港:2.2万人(2.7%)、イスタンブール空港:1.8万人(2.2%)、ノイバイ国際空港:1.6万人(1.9%)、トリブバン国際空港:1.5万人(1.9%)、ダナン国際空港:1.5万人(1.8%)、マクタン・セブ国際空港:1.4万人(1.7%)、スワンナプーム空港:1.3万人(1.6%))の空港にも、日本発ソウル経由の乗継旅客が多く存在していることが観察される。

  一方、表3は、2019年における関西発仁川経由の乗継旅客について、その上位10目的空港と乗継旅客数、およびその総乗継旅客数に占める割合を示したものである。
 同表からは、済州国際空港(11.5千人(6.6%))や北京首都国際空港(8.4千人(4.8%))、イスタンブール空港(8.2千人(4.7%))、タシュケント国際空港(7.0千人(4.0%))、金海国際空港(4.3千人(2.5%))等のアジアの空港、ロンドン・ヒースロー空港(6.8千人(3.9%))やフィウミチーノ空港(6.7千人(3.9%))、パリ=シャルル・ド・ゴール空港(5.3千人(3.1%))、バルセロナ=エル・プラット空港(4.3千人(2.5%))をはじめとするヨーロッパの空港、あるいは、ロサンゼルス国際空港(5.7千人(3.3%))に代表される北アメリカの空港が、関西発仁川経由乗継旅客の主な目的空港となっていることが分かる。また、航空会社に関しては、大韓航空(7.3万人(42.2%))とアシアナ航空(5.2万人(29.6%))の2社で、全体の70%以上を占めていることが観察されるだろう。
 なお、参考までに、関西以外のソウル経由乗継旅客数が多い上位10空港についても、その上位10目的空港と乗継旅客数、およびその総乗継旅客数に占める割合を示しておく。

4 おわりに

 本研究レポートでは、日本とソウル間における航空路線を概観した上で、特に、関西に焦点を当てながら、日本の空港を出発しソウル(仁川、金浦)を経由する乗継旅客の流動実態を把握した。
 これまで、日本の地方空港でソウル路線が相次ぎ開設/拡充されてきた背景としては、韓国系航空会社が日本市場への傾斜を強めていることに加えて、まず、韓国経済と各地域経済との結び付きが強まっていることを指摘できるだろう。そして、日本の大都市圏における国際空港整備の遅れから、地方空港からの乗り入れが制限されてきたこと、また、乗り入れが実現している場合でも、国内線と国際線間の乗り継ぎ上の利便性が相対的に低いことも挙げることができる。国土交通省も、一時的な方策として、韓国系航空会社の一方的な乗り入れを容認してきた。ソウルへの乗り入れが実現すれば、旅客にとっては利便性が高まることも、地方空港におけるソウル路線開設/拡充の大きな要因となった。
 本来であれば、ソウルにスピル・オーバーしているこれらの旅客は、日本の大都市圏(東京、大阪、名古屋)における国際空港で対応すべき旅客であり、今後、日本の国際拠点空港の適切な機能分担と最大活用を考える上で、この分析結果には大きな政策的含意があるといえるだろう。


脚注

*本研究レポートにおける分析で利用したOAGデータは、公益財団法人中部圏社会経済研究所の調査研究プロジェクト「中部国際空港の将来像調査研究会(座長:加藤一誠(慶應義塾大学商学部教授)」から提供を受けた。ここに、記して感謝申し上げる。

1) 以下ではOAGデータを利用するが、同データは、主にMIDT(Marketing Information Data Transfer)に基づいている。MIDTは、世界のGDS(Global Distribution System)ベンダーであるアマデウス、セーバー、トラベルポート、アマカス、インフィニ、アクセス、トッパス、トラベルスカイ等の予約データを取り込み生成したデータであり、OAGの需要データ(トラフィック・データ)には、同社が独自の方法で算出した推定値が含まれている。従って、OAGデータは、全ての旅客流動を正確に反映している訳ではない。OAGデータの正確性に関しては、松本(2024)[本研究レポートNo.543(2024年2月発行)]を参照のこと。


参考文献

1) 杉谷 愛・丹生 清輝 [2010] 地方空港における国際路線・旅客の推移と現状, 国土技術政策総合研究所資料, 603, 国土交通省 国土技術政策総合研究所, 38ページ.

2) 松本 秀暢 [2024] 関西国際空港における旅客流動の実態-純流動と総流動からの考察-, KANSAI空港レビュー, 543, 28-34.

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