長谷川 朋弘 氏
近畿地方整備局長
総務省が今年の1月末に公表した2024年の人口移動報告によると、東京一極集中が拡大した中、大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)は、外国人を含む集計を開始した2014年以降、はじめて転入超過に転じました。インバウンドの恩恵を受けている関西は、大阪・関西万博を機に自立した圏域を構築し、その効果を他の圏域まで波及・拡大させる必要があります。いま、近畿地方整備局では新たな「関西広域地方計画」の策定に取り組んでおり、都市と地方との新たな結びつき・人の往来を円滑化するために、関西は3つの視点で圏域づくりに取組むこととしています。
(1)活力ある圏域づくり
関西は日本中央回廊の西の拠点として、世界の玄関口となる経済圏域の形成を目指しています。少子高齢化・担い手不足が進行する中、この役割を果たすためには関西の強みであるライフサイエンス分野や企業等の特色あるものづくり文化を背景に、イノベーションを創出し続ける圏域にしなければなりません。「うめきた2期」のように知的交流拠点となる都市開発を推進し、世界に恥じない人中心のまちなみ形成に取り組むことで、海外から人材をたくさん呼び込む圏域にしたいと考えています。
(2)安全・安心な圏域づくり
関西は南海トラフ地震や激甚化する風水害・雪害等のリスクに直面しています。これからの災害頻発時代を乗り越えるためには、加速するインフラ老朽化にも対応しながら、災害時でも社会経済活動を持続できる強靱な圏域にしなければなりません。また、能登半島地震での災害関連死の問題を見て思うことは、平時から多様な人材が地域に関わり、地域課題を解決する社会をつくることだと思います。政府が進める「地方創生2.0」による総合的な地域支援のもと、関西のどこに住んでも安全・安心な暮らしを確保できるハード・ソフト一体となった総合的な防災・減災対策を進めて参ります。
(3)個性豊かな圏域づくり
関西のインバウンド観光客はコロナ禍の行動制限に伴う減少から戻りを見せた一方、大阪・京都・奈良の観光地ではオーバーツーリズムが問題となっています。このため関西の観光施策は特に「分散」と「相互理解」が重要です。世界の人々を魅了し続ける個性豊かな地域づくりを推進しつつ、各地域への移動円滑化に取組みたいと思います。そして地域で活躍される皆様には、来訪者に歴史・文化、貴重な自然等を正しく伝えて、地域を大切にしてもらえる観光地域づくりを目指して頂きたいと思います。
さいごに
関西広域地方計画のキーコンセプトは、“Kansai Transformation”です。これには、「関西はアジアをはじめ、世界との架け橋となり、イノベーションを生み出し続け、我が国の成長エンジンとして飛躍を遂げる」という意味が込められています。関西3空港を拠点に人やモノの流れを円滑化する政策の強化はたいへん重要であり、近畿地方整備局はこれからも多くのデータを分析しながら、必要なインフラ整備を進めて参ります。